原野秀樹さんに無罪判決=昨年のW杯反対デモで逮捕=弁護士「不当、見せしめ」

 昨年6月23日夜、サンパウロ市パウリスタ大通りであったW杯公費乱用反対デモで逮捕された日系四世の原野秀樹ファビオさんの刑事裁判で、無罪判決が6月26日に出された。G1サイト6月29日付、R7サイト6月30日付などが報じた。原野さんは昨年6月23日から8月7日まで刑務所に勾留されており、弁護士は「不当逮捕」と訴え、本人も最初から「無罪」を主張していた。

 「犯罪学研究所(IC)と軍警特殊戦術行動班(Gate)が「押収されたものは単なる模造品で、実際には爆発しない」との鑑定書を昨年8月初めに出した。これを受けて昨年9月18日、爆発物所持の罪に関する無罪判決が出されていたが、四つの罪(犯罪集団の組織、犯罪行動の扇動、抵抗、侮辱)に関する審理が続けられ、今回無罪判決が出された。
 その間、サンパウロ州市警組織犯罪捜査課(Deic)と州検察から原野さんはブラック・ブロックのリーダーとの疑いもかけられ、45日間もトレメンベー刑務所で拘留され、昨年8月7日に釈放されていた。
 無罪判決を出したのはバラ・フンダ裁判所第10犯罪法廷のマルセーロ・マチアス・ペレイラ判事。同じ日の抗議行動で逮捕された英語教師のラファエル・ルスヴァルギさんも、今回、同様に無罪判決が出された。
 G1サイト記事によれば、爆発物所持に関する無罪判決の後、アウキミン州知事は「警察や犯罪学研究所自らが出した鑑定書で爆発物でないと明らかにした。だが、容疑はそれだけではない。拘留されたのには理由がある」とコメントしていた。
 釈放された直後の昨年8月13日、ルイス・エドアルド・グリーンハウギ弁護士はサンパウロ大学法学部で行われた記者会見で、「ファビオはインジュスチッサ(不当)の被害者。選挙でアピールするための逮捕。〃見せしめ〃として最悪の例(原野さん)を選んだ」とし、潔白を訴えていた。
 今回の無罪判決に関して、当時から支援してきたアドリアノ・ジオゴ元サンパウロ州議は「これは仕組まれた逮捕。原野は司法の生贄にされていた」とコメントした。
 ただし、まだ州検察が上告することは可能。

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 原野秀樹ファビオさんを支援するサイトには、アニメ『聖闘士星矢』のコスプレをする本人の写真も掲載されており、〃反政府闘士〃や〃組合活動家〃というよりは、いかにも内気で平和な「オタク」と言った方が現実に近いイメージか。この不当逮捕で、本人はもちろん家族の心情がどれだけ傷つけられたか…。本紙から本人にコメントを求めたが返答はなかった。いくら国の威信をかけたサッカーW杯の最中とはいえ、真面目なイメージが強い日系人が政治的な〃見せしめ〃に選ばれること自体、異常な事態といえそうだ。