マナウス総領事館=アクレ州医療向上に50年=川田哲男氏に旭日双光章=日本移民「神様来た」と涙

 〃ブラジル一の僻地〃と呼ばれる貧困地帯アクレ州で、50年間に渡って医師として地域医療に生涯をささげた川田哲男さん(78、二世)が先月22日、州庁舎(リオブランコ宮殿)で日本政府より旭日双光章を受章した。無償医療を生涯貫き、3病院の設立に奔走し、州医療向上に尽くした川田氏は、日・非日系問わず地域住民の敬愛の対象となった。マナウス日本国総領事館(山﨑和夫総領事)が主催した伝達式には家族や友人、元同僚ほかチアン・ヴィアーナ州知事、ナザレ・アラウージョ副知事、州工業連盟会長、市立病院代表など約50人が出席、賛辞を贈った。

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 1961年にリオ連邦大医学部を卒業し、当時過酷な生活を強いられていたキナリー移住地の移民や現地人の医療事情を改善すべく、同州を研修先に選んだ。当時の州知事から召集の要請を受け取ると、翌年からリオブランコ市立バルバラ・エリオドーラ病院に赴任、全科の診療と熱帯病の研究に励んだ。無償で医療を行う同医師を、日本人移民は「神様が来た」と涙して喜んだという。
 研修修了後も同地へ残り、サンタカーザ貧民救済病院など3病院の創設に奔走、自ら院長を務めた。州日系協会の創設にも携わり、会長として日系社会と現地の人々の融和に大きく貢献した。
 式典では両国国歌斉唱後、同総領事館から川田医師の功績が披露され、旭日双光章が授与された。全国医師会アクレ州代表部理事長は、川田氏の活躍を取り上げた雑誌や新聞記事を引き延ばしたパネルを贈呈した。
 川田医師は「栄誉ある叙勲を受け、言葉につまる程の感銘を受けている。50年以上アクレ州での医療活動に人生を捧げてきたのは、地域の人々、家族や友人、何よりアクレ州を心から愛しているからです。感動で胸が一杯」と述べた。
 アラウージョ副知事は「川田医師を招集したいという手紙を出したのは自分の父だった。貴方は州の宝です」、ヴィアーナ州知事は「これほど州のために全てを捧げた人物を私は知らない」と賞賛した。
 その後、出席者全員で記念撮影を行い、カクテルパーティに移った。同日、数々の地方紙やTⅤグローボで叙勲伝達式のニュースが取り上げられた。

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 マナウス総領事館から叙勲を受けた川田哲男医師。実直で奢らず、誰でも分け隔てなく治療を施したことから地域住民の尊敬を集めたという。そのおかげで、当時差別を受けていたという日本移民への扱いも徐々に変わり、同地における日本人の立場は飛躍的に向上したと言われる。こうした評判を聞きつけ、450キロ先のロンドニア州都ポルトヴェーリョ市からわざわざ船を乗り継ぎ、治療を受ける患者も後を絶たなかったとか。