日系社会言語研究の先駆け=森教授らが著書を出版

 日系・沖縄移民社会における日本語の諸相を探る『日系移民社会における言語接触のダイナミズム―ブラジル・ボリビアの子供移民と沖縄系移民』(318頁、7千円、工藤真由美・森幸一編著)が、8月中旬に大阪大学出版会から上梓された。
 同研究は文科省の補助金事業「21世紀COEプログラム」の一環で、02年に工藤真由美阪大名誉教授の主導で開始した。ブラジルとボリビアの日系3世代600人を対象に、言語生活調査や談話収録を実施。子ども移民と沖縄移民に焦点を当て、日語、沖縄方言、ポ語、スペイン語の言語接触(2種以上の言語が影響しあうこと)と言語移行について分析した。
 調査の全貌と成果の一部は『ブラジル日系・沖縄系移民社会における言語接触』(ひつじ書房)として09年に1冊目として刊行した。今回のが2冊目になる。今後は調査地域で話されている日語と沖縄方言の特徴を談話収録から分析し、3冊目にまとめる。
 いずれもポ語に翻訳した上で、今度はブラジル人研究者と共に、日系社会で話されているポ語の研究に取り掛かる。
 共同研究者の一人である森幸一サンパウロ大学教授は、「日系社会の学術的言語研究がなされたのはこれが初めてで、世界にも類を見ない」と研究の価値をアピールした。
 購入希望者は森さん(11・2948・1231)まで。郵送料込み150レアルで、阪大から直接郵送してもらえる。

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 森幸一USP教授が阪大メンバーと進めている言語研究は、沖縄県民に着目した言語研究としても先駆的とか。そのためサンパウロ市ビラ・カロンで行なった現地調査では、「初めてウチナー口を研究してくれる」と地元の人が泣いて喜んだという。調査は地元民の協力で成り立つ現地参加型で、貴重な資料は各地域に還元された。これから談話収録分析、ポ語の調査と仕事は目白押し。「関心のある若手を見つけて引き継いでいかないと」と後継者育成がこれからの課題のようだ。