志半ばに倒れた同志忘れず=コチア青年移住60周年式典=700人超が盛大に祝う=「できれば65周年も」

 「妻たちは力強く優しく支えてくれました。また志半ばに倒れた同志を忘れてはなりません」。20日午前9時半から文協の国士舘スポーツセンター(サンパウロ州サンロッケ市)で行われたコチア青年移住60周年記念式典で前田進同協議会会長は涙を堪えながら、こみ上げる胸中をそう吐露した。700人以上が会場に駆けつけ、節目を祝った。遠くは首都ブラジリアやミナス州、パラナ州、サンタカタリーナ州、リオ州からも参加があった。

 55年9月15日にサントス港に到着したコチア青年109人を皮切りに、最後の67年1月のさくら丸までの12年間に約50回。合計人数は戦後移住者としては最大の2508人もいた。
 まず、コチア市の日本庭園にあった下元健吉胸像と先没者慰霊碑の移転除幕式が行われた。物故者追悼法要では参列者が花を供え合掌した。
 式典会場の体育館に移動し、西尾雅夫副会長が開式の辞を述べた。舞台上にはコチア産組の下元健吉専務、初代移住課長の山中弘氏、日本全国農業共同組合中央会の荷見安会長ら功労者の写真が飾られていた。
 日伯両国歌を斉唱後、前田会長はコチア青年の功績に続けて、「コチア青年の後継者がブラジル社会で活躍していることは大きな喜び」話した。
 梅田邦夫大使に続いて、下元慶郎元コチア産組代表が「父が作った組合は解散することになったが、地方では残った皆様ががんばってくださっている」と感謝を述べた。林芳正農林水産大臣の祝辞を仙台光仁大臣官房国際部参事官が代読。「日系人のブラジル農業への貢献に敬意を表します。今後も日伯の架け橋である皆様を応援する」との言葉が贈られた。
 奥野長衛全国農業協同組合中央会会長の祝辞を一箭拓朗役員室室長が、オイスカ・インターナショナル総裁の祝辞を渡邉忠氏(同副理事長)が代読。那須隆一JICAブラジル事務所長は「これほど日本人が感謝、尊敬されている国はほかにない。皆様の御努力が積み重なった成果」と褒め称えた。さらに文協の呉屋春美会長、コチア青年二世の飯星ワルテル下院議員のあいさつが続いた。
 祝電披露では、木村一男家の光代表理事会長、JA長野中央会大槻憲雄会長らのメッセージが朗読された。続いて二世代表として伊勢脇聖史さんが父親との思い出と二世として誇りを語った。
 閉式の辞では広瀬哲洋記念祭大会委員長が、文協から無償貸与された土地の活用に言及し、二世世代へのメッセージで締めくくった。梅田大使らによる記念植樹が行われ、ケーキカットの後は中前隆博在聖総領事が乾杯の音頭をとった。祝賀昼食会のあと日本舞踊、民謡、演歌などのアトラクションが行われ、賑やかに旧交が温められた。
 黒木慧さん(1次1回)は「同期の人たちが13人も来た。みんなこれが最後という気持ちがあったのだと思うが、できれば65周年もやりたい」と感想を述べた。

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 コチア青年式典後のアトラクションで司会をした黒木美佐子さん(77、花嫁1次2回)は「式典の進行役の二世女性は、日本語もきれいで将来が頼もしい」と微笑んだ。杓田美代子さん(72、三重)も「遠くからたくさんの懐かしい人が来てくれて本当に嬉しい」と語った。
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 コチア青年式典で森進一の「おふくろさん」を熱唱した若者は、黒木慧さんの孫、成人さん(16)だ。「祖父母、両親への感謝を込めて歌えたことが嬉しい」という彼の歌声はすでにプロ並み。日本での歌手デビューを目指しているとか。コチア青年子弟らしいチャレンジ精神の旺盛さを活かし、連邦議員の次は日本のプロ歌手誕生か!?