日本へ向け発言する役割=サンパウロ講演を振り返って=目良浩一氏がコロニアへメッセージ

 昨年10月、サンパウロを訪問した折、自著『マッカーサーの呪いから目覚めよ、日本人!』(桜の花出版)を持参したところ、訪伯のきっかけをつくってくれたブラジル日系協会の河合英男(hideo kawai)氏に「ポルトガル語に翻訳されたものがあれば多くの人が読める」という話がありました。
 それがきっかけとなり、日系団体の皆さまとニッケイ新聞社のご努力で『A Verdade sobre a Guerra do Pacifico』が出版されることになり、刊行記念講演をすることになりました。

出版記念のサイン会には長蛇の列ができた

出版記念のサイン会には長蛇の列ができた

 米国ロサンゼルスからサンパウロに3泊5日の短い講演旅行でしたが、9月10日には、日系組織の指導者の方々から篤い歓迎を受け、盛大なる晩餐会をしていただきました。皆様の日本を思う心の深さと厚みを感じました。最近日本では「おもてなし」などと言っていますが、御地には昔からの「おもてなしの心」が生きています。
 翌11日には、サンパウロ大学の日本研究センターで、熱心な学生達と日本研究ご専門の教授方々に話すことができ、良い時間が持てました。午後は私たちを強く支援してくれている日本会議を含む方々と『安倍談話』に至るまで親しく、話し合うことができ、ご一同から勇気を頂きました。
 12日には、今回のメインであります出版記念講演を広島県人会館で「太平洋戦争(大東亜戦争)の発端の真実」について3時間を超す講演を行いました。感動したことに、内容が詳細な歴史的な事柄であるにも関わらず約200人が熱心に耳を傾け、ある人はペンを取りながら聞いてくれました。私の言葉が聴衆に吸い込まれ、皆さんの熱意に引っ張られているうちに講演終了を迎えました。質疑応答の時間には、非常に的確な質問が幾つかなされました。
 このことは、サンパウロの日系人が日本の歴史について、深い関心をもっていることと、確かな情報を持っていることを示しています。会合は熱気を帯びた状態で終了しました。日本語のオリジナルの本もポルトガル語の本も多くの人が購入していただき感激いたしました。10冊も購入した方もおいででした。

会場には約200人が詰めかけ熱気に包まれた

会場には約200人が詰めかけ熱気に包まれた

 昨年サンパウロを訪れた時にも感じたことですが、ブラジルの日系人は、大変頼もしい。アメリカの日系人とは大いに異なって、日系であることに誇りを持ち、自信をもって行動しています。 アメリカでの日系人が、出来るだけ日系であることを隠して(歴史的背景が違うことを加味しても)、米国社会の主流に入ろうとしていることとは対照的です。
 かなり多くの日系人が社会的に重要な地位を占めるに至っていますし、軍隊でも高い地位についている方が多数で、サンパウロ州の大学では日系人が教員の4割にも達していると聞いています。日系人の勤勉さ、誠実さに自信と誇りが加われば、このような成果をもたらす見本です。
 しかも、ブラジルの日系人には、日本で生まれ育った日本人が持っているような自虐的な面がない。戦後の被占領時代にマッカーサーの占領政策に汚染されていないのです。
 従って、ブラジルの日系人の方が本来の日本人の良い性格をより多く引き継いでいるともいえると同時に、海外に住んでいる事により望むと望まないに拘わらず国際人としての目が養われているのです。
 これからは大いに日本に向けて発言していかなければならない義務があると言っても過言ではないと思います。今後の日本を牽引していく役割も果たせるでしょう。
 今回のブラジル訪問は大きな成功でした。深くニッケイ新聞社に感謝するとともに、多角的に支援していただいた皆様にも心からの謝意を述べたいと思います。再び、皆さまと共に、活動できる日を待ち望んでいます。

■目良浩一氏略歴
 1933年に朝鮮京城府生まれ。東京大学工学部建築学科卒、同修士課程修了後、フルブライト留学生として渡米。ハーバード大学でPh.D.取得(都市地域計画学)。
 ハーバード大学経済学助教授、筑波大学の社会工学系教授(都市計画担当)、東京国際大学商学部教授、南カリフォルニア大学で国際ビジネス授業担当教授などを歴任。
 2006年から日本の歴史問題に注目し、米国ロスで非営利法人日本再生研究会を立ち上げる。14年発足の「歴史の真実を求める世界連合会」代表。