ビジネスコラム=PwCブラジル=第3回=年度末税務パッケージ=矢野クラウジオ(タックス・ディレクター)

 来年度の国の財政赤字を補填するために政府は、歳入を増やすことを目的とし、次の暫定措置を発表しました。

□暫定措置692号(MP692)― 2015年9月22日□
 個人が得たキャピタルゲイン(債券または株式などの資産の価格上昇による利益)に対する課税が、15%?30%の累進課税となります。法律9.249/95の18条によると、居住者に適用されるキャピタルゲインの規則が、非居住者(個人或いは法人)によるブラジルでの資産売却にも適用されるとしています。
 ここで留意すべきことは、日伯2国間の二重課税防止条約によって、ブラジルに非居住者の日本人は、ブラジルで得たキャピタルゲインには課税されないということです。この暫定措置は、2016年1月1日から有効となります。

□暫定措置694号(MP694)―2015年9月30日□
 2016年から自己資本に対する利子配当(JCP)の計算を変更し、長期金利(TJLP)の最高額が年率5%に設定されることになります。自己資本に対する利子配当(JCP)の計算は、株主資本勘定に対する長期金利(TJLP)とみなし、資本評価額調整勘定は除きます。その他、受益者への支払いや受取日における源泉所得税率は、15%から18%になります。日本での受益者に関しては、源泉所得税は日伯2国間の二重課税防止条約により、12・5%が継続されます。
 2016年3月までは、在ブラジル日本企業の子会社が日本に支払う利子配当(JCP)は、日本では外国子会社配当益金不参入(95%が益金参入されない)に該当することになります。配当金を支払うより、利子配当(JCP)を支払う方が、ブラジル国内で利子配当が損金参入できるため有利であることは明確です。
 2016年4月1日現在、ブラジルに所在する日本企業の子会社の場合、ブラジル子会社が支払う利子配当(JCP)については2018年3月までは益金不参入となります。
 最後に、暫定措置694号(MP694)は、2016年度のR&Dに係る税務ベネフィットを停止するとしています。
 暫定措置に含まれている事項は、国会で承認される前の協議中の事項であるため、まだ変更の可能性があり、法律として承認されるまでは、その内容が変更される可能性があります。
 全て承認されば、2015年12月31日までに法制化されますが、承認が2016年以降になった場合は無効となります。

(問い合わせclaudio.yano@br.pwc.com ※この記事は、ブラジルにおける法令等の改正動向等をお知らせするため発行されたものであり、一般情報の提供を主たる目的としています。個別ケースに対する専門的アドバイスとして、ご利用頂けない場合がございますので、あらかじめご了承下さい)