ブラジル下院=日伯間の受刑者移送条約承認=受刑者に母国での服役認める

 相手国で服役している日本人、ブラジル人受刑者に、本国で服役する機会を与えるための日伯間の移送に関する手続等について定めた「日伯間の受刑者移送条約」が10月29日、ブラジルの連邦下院で承認された。日本で服役するブラジル人受刑者が希望すれば、ブラジルの刑務所で服役できるようになるもの。逆も可。
 受刑者の社会復帰の促進が目的で、昨年1月24日、日本の岸田文雄外相とアンドレ・アラーニャ駐日ブラジル大使が東京で署名し、その後、日本の国会で承認されていた。今後はブラジル上院での審議となる。
 条約の文面によれば、受刑者は裁判国または執行国に対し、移送の関心を表明でき、裁判国または執行国が受刑者の移送を要請できるという。
 移送には、対象となる受刑者が執行国の国民等である、判決が確定している、残りの服役期間が一年以上残っている、裁判国での受刑者の犯罪行為が執行国の法令においても犯罪になる、裁判国、執行国、受刑者が移送に同意している、という条件を満たす必要がある。
 日本国外務省の発表によれば、日本で服役するブラジル人受刑者は240人(2013年12月時点)で、ブラジルで服役する日本人受刑者は0人(同)。日本のポルトガル語メディア「IPCデジタル」11月2日付記事によれば、日本で服役するブラジル人受刑者の中には、刑務所内のコミュニケーションはすべて日本語、出される食事も日本食などという理由で、母国での服役を望む受刑者がいるという。
 日本では、欧州評議会が作成した「刑を言い渡された者の移送に関する条約(CE条約)に加入したため、同条約の締結国との間では、一定の要件下で外国人受刑者の母国への移送が可能となっている。
 しかしブラジル側は同条約に加入しない方針を採っており、両国間での受刑者の移送を実施するため、二国間の受刑者移送条約の締結に向けた交渉が、2012年に開始されていた。