「アミーゴには全てを与え、敵には法で接す」という伝統

現行犯逮捕されたデウシジオ・アマラル上院議員(Foto: Jane de Araújo/Agência Senado, 06/10/2015)

現行犯逮捕されたデウシジオ・アマラル上院議員(Foto: Jane de Araújo/Agência Senado, 06/10/2015)

 25日のデウシジオ上議逮捕は「現行憲法の施行以来、初めて現職が捕まる」事態であり、首都に激震が走った。連邦議員には「不逮捕特権がある」と言われるが、実は例外条項として「現行犯をのぞく」とある。警察の目前で犯罪行為をするようなお頭では当選しないから、実際「特権」だと思われていた▼ところが今回、最高裁は〃現行犯状態〃との異例の判断を下した。さらに司法による事前許可のない録音が逮捕根拠として採用されたのも例外的な状況であり、ある意味、最高裁が法を拡大解釈してでも逮捕すべきと判断したといえる▼なぜそこまで―と不思議に思ったが、録音を聞き納得した。11月4日に首都であった内密な会合で同上議が、ペトロブラス疑惑で拘束中のセルヴェロ容疑者が司法取引による減刑を伴う証言をしないように金を与え、国外逃亡を提案する内容。最高裁判事の名前を次々に出して「話は通してある」という口ぶり。明らかな捜査妨害だ▼同上議はPT所属で、上院でジウマ政権を代表する「政府代表」の重職を担う。役職上、頻繁に大統領と会合を持つ。そんな人物が件の提案をし、「司法に手をまわした」とする発言だけに、最高裁は猛烈に反発せざるを得なかった▼かつてヴァルガス大統領時代には「アミーゴには全てを与え、敵には法で接す」と言われた。敵に厳法を振り回すのは当地の〃伝統〃であり、最高裁をその状態に追い込んで、敵に回したPTの今後は暗い▼同日晩の上院審議では実名評決で逮捕維持という〃前例〃まで作った。次はクーニャ下院議長が「国外秘密口座を持っていないと偽証」が「現行犯状態」となる可能性すらも。(深)