群馬県=大泉町にブラジル資料館を=「コミュニティ再生拠点に」=交流ネットが構想発表=外国人障害児向けサービスも

 全てはコミュニティ再生のため――特定非営利活動法人「NPO交流ネット」(船津丸謙一理事長、愛知県一宮市)は、群馬県大泉町〃ブラジルタウン〃のシンボル「ブラジリアン・プラザ」(約800坪)を、来年中ごろを目途に「ブラジル資料館」を含むコミュニティ向け施設に改装する構想を持っており、林勉事務局長にその詳細を聞いてみた。

ブラジリアン・プラザ(アバンセ・サイトより)

ブラジリアン・プラザ(アバンセ・サイトより)

 1995年に日本初のブラジル人向け商店が約10店舗も一カ所に集まったショッピングセンターとして同プラザは開館し、当時大きな話題を振りまいた。90年代後半には「ブラジルタウン」とも呼ばれた大泉町だが、金融危機後に同種の商店が減って、同プラザには数店が残るのみだという。
 そのシンボル的な場所を「コミュニティ再生の拠点」にするのが、この構想だ。累計で6万人余りの外国人を雇用した実績がある大手業務請負会社「アバンセ」の林隆春社長が中心になり外国人援護を目的に同NPOは04年に創立された。同社長が同プラザの建物も購入し、構想実現の後押しをする。
 大泉町(人口4万1千人)には、ブラジル人4千人、ペルー人1千人を含めた約6600人が居住し、高い外国人比率(約15%)を占める。林事務局長は「コミュニティの核になると同時に、多文化共生、ブラジル情報発信のスペースにしたい。地元大泉住民と相談しながら具体化していきたい」との思いを持っている。
 「そこに行けば、ブラジル人地域住民が必要とする情報がすべて得られる、中心になるような場所にしたい」。日本で育った四、五世の世代がルーツを忘れないように、サンパウロ市の移民史料館と協力して日本移民史の展示をしたいという。
 ポ語書籍も置く図書館、南米の旅行社、求人情報提供、南米料理のレストラン、結婚式やパーティに使えるイベントも会場を作り、日本人も外国人も集まれる場にしたいという。
 これらの背景として、林事務局長は「リーマンショック後、それまで地域のリーダー格だった人たちが皆ブラジルに帰ってしまい、コミュニティがバラバラになってしまっている」との危機感があるという。改装や設立に関わる資金はブラジル関係企業に寄付をお願いするという。
 それに加え、外国人児童向けの発達障害支援・放課後等デイサービス事業所も検討している。「全国的に見ても、外国人児童向けの障害児通所施設はなかなかできないので、ぜひ実現させたい」と意気込んだ。

□関連コラム□大耳小耳

 在日ブラジル人企業家グループ「ブラジリアン・ビジネス・グループ」代表理事も務める橋本秀吉同NPO理事は、新生ブラジリアン・プラザの中に「ブラジルから日本に進出したい企業向けの商品を紹介するアンテナショップも作りたい。すでに20社ほどが興味を示している。グアラナは現在、日本で生産してシンガポールでも販売している。〃ブラジルの味〃を日本で製造してアジアで販売する拠点になる。その準備だ」とのアイデアを持っている。地元企業家が育てば、将来の地域リーダーとなる可能性も大きい。さまざまな分野で日本に深く根を張る日系社会になってほしいものだ。