ブラジルには国を憂うる国士はいないのか

連邦議会の倫理委員会で政敵を指刺しながら、真っ赤になって激論する様子。この調子で、国全体の問題も論じてくれればいいのだが…(Foto: Lucio Bernardo Junior/Câmara dos Deputados)

連邦議会の倫理委員会で政敵を指刺しながら、真っ赤になって激論する様子。この調子で、国全体の問題も論じてくれればいいのだが…(Foto: Lucio Bernardo Junior/Câmara dos Deputados)

 「連邦議員が本会議場内で殴り合いや投票機破壊まで…。彼らのうち、何人が国全体のことを考えているのか」―大統領罷免に関するドタバタを見るにつけ、暗澹たる気分になる。個人や党の利害の対立ばかりが先立ち、政府は混乱を収集する力を持たない▼先週土曜(5日)付の本紙2、3面の見開きは実に対照的な内容だった。2面は大統領罷免に関わるドタバタ騒ぎの記事。対する3面には、戊辰戦争で最後まで抵抗した庄内藩に対する武士道をわきまえた西郷隆盛による対処、「戦いは勝てばもうそれでいい。あとは同じ日本人、新しい日本を作る同志じゃないか」と敵すらも感動させた逸話が掲載された▼一方、今年のインフレ率は10%を超え、来年早々にも基本金利をもう一段階上げる機運だ。経済成長率はマイナス約3・5%、失業率は急上昇中だ。外的要因を見ても米国は利上げ基調にあり、そうなれば投資資金は北米に吸い上げられ国内は干上がる。石油価格は40ドルを割り込み、ペトロブラス再建には限りなく悪い環境だ▼ブラジル経済を立て直すには、まず「緊縮財政」し、続いてカンフル剤的経済政策を実施する必要がある。ところが8月以来、政府の「緊縮財政」案は一向に議会を通らない。やれクーニャ議長のスイス秘密口座だ、ジウマの罷免だと「政治問題」が起きて、議員の関心がそっちに偏ってしまい、国民に一番関係する経済立て直しが後回しにされてきた▼今もクーニャ議長の〃悪あがき〃で緊縮財政が後送りされ続けている。今のままなら、格付け会社は容赦なく投資適格から降格させるだろう。ブラジルに南洲翁のような国士は出ないものか? (深)