二つの団体の還暦に思う

 個人的に思いの深い二つの団体が最近、創立60周年、人間でいうと還暦を迎えた。人生でも色々なことがあるのに、数百、数千、いや数万人が関係してきた団体の歴史は簡単に振り返れるものではない。一つは10月の広島文化センターである▼記者職を離れた後はわずかな期間ながら理事も務めた。第三者として見るのと、実際に運営に関わるのは大きな違いがある。県人会の批判はさんざん書いてきたが、よく怒られなかったものだと首をすくめる思いだった。今回の周年行事に関して、地元広島で働きかけができたのは一世として嬉しい限り。ほぼ半世紀出されなかった会誌の編纂にも関わることができたのも感慨深い。来年無事刊行の運びとなりそうだ▼2002年に記者として働き始めた当初、先日式典があった文協の担当になった。全く分からない状況で、まず訪ねていったのが安立仙一事務局長。策士とも言われた古老の企みか、上手く関心を持たせたくれたおかげで、長くコロニア諸事に好奇心を持ち続けることができた。今会えば話せることはたくさんありそうだ▼一世の谷広海さん、続いて二世の小川彰夫さんが頑張った文協選挙、渡部和夫さんを中心にした文協改革など夢中で取材した。小さなコロニアというけれど、移民の歴史、育った環境で違う日本への思いの相違、複雑な人間関係、その後ろにはブラジル社会が広がる無限の世界に見えた。人間観察の大事な時期だった▼多くの団体が毎年節目を迎え、そして毎日それぞれの歴史を刻み続けている。そうした歴史に触れ記録を残せたことは、今更ながら日本人冥利に尽きると思う。(剛)