静岡県菊川市=外国人児童の教育現場は今=人格形成と社会適応の現実=(6)=長期的視点が必要な教育現場

掃除の時間の様子

掃除の時間の様子

 「虹の架け橋教室」は、2009年には全国で32団体、34件。14年には21団体で22件の教室が開かれ、6年間で8751人が学び、4333人がいずれかの学校へ就学、そのうち2924人は日本の小中学校または高校・専修学校などへ就学した。
 当初3年の予定で始まった事業だが、現場からの要望により昨年度末まで継続、今年度からは「帰国・外国人児童生生徒教育の推進支援事業」として支援は続くものの、補助は3分の1に減った。
 同事業の主目的は、経済危機によってブラジル学校等へ行けなくなった定住外国人の子供たちの公立校へ就学の緊急支援だった。ところが継続が要望されている現実からは、その後も新たに定住目的で来日する子供たちにも必要とされている場所だ―ということではないか。
 リーマンショック後の一時的対策でなく、「どう外国人労働者を移民として受け入れるか」の問題であり、「移民政策」としての対応を意識せざるを得ない機会だ。
 移民の一世は祖国の習慣や考え方を引きずるが、二世はどんどん現地化する。ブラジル日系社会においても、言葉が達者な二世が、一世とブラジル社会の中間層となって、市民生活を安定化させるうえで中心的な役割を果たしてきた。
 未来を担う子供は時代の最先端にいるのであり、「移民政策」の最前線も教育現場にある。
 結果的にホスト社会側からすれば、後手後手に回りがちな一世の対策を重視するより、二世の教育に注力するほうが効率的かつ効果的に機能するのではないだろうか。
   ☆  ☆  
 菊川市で開かれている虹の架け橋教室を覗いてみることにした。
 同市内にある菊川南陵高校の寮の半分を借りて教室を運営するのは「NPO法人日本インターネットスクール協会」。同協会はここ以外に焼津市でも虹の架け橋教室を運営している。
 理事長の山下泰孝さんは、40年前から小学生向けの自然体験活動キャンプを指導したり、不登校や引きこもりの相談や指導を行ってきた。また、県内の不就学者数の調査を請け負うなどの実績もあったためか、「虹の架け橋教室」の業務委託の案内が突然来たという。
 委託を受けた同協会は、焼津市内でもともと運営していた塾と菊川市内の幼稚園の教室を借り教室を開いた。後に人数が増え、幼稚園から菊川南陵高校の寮に移転。子供たちは各市町の教育委員会から紹介され、6市1町から集まり、遠い子になると1時間半くらいかけて通っている。
 「NPO法人日本インターネットスクール協会」両教室で、これまで360人の子供たちを指導し、そのうち257人を公立校に転入させた。(2015年10月現在)
 保護者会や家庭訪問を行ったり、学校とも連絡を密に取り合ったりし、転入しても挫折しないようにと、きめ細やかかつ甘くはない指導が行われている。(つづく、秋山郁美通信員)