子や孫の日本を見る目が変わる=青年図書館ニッケイ新聞 『日本文化』刊行=好評「国際派日本人講座」ポ語に

 「これを読めば、息子たちの日本を見る目が変わる」――毎週土曜付けで掲載されて好評を博している「国際派日本人要請講座」のルビ付きの日本語と、ポ語訳を一緒にした本『日本文化(Cultura Japonesa)』(35レアル)が、サンパウロ青年図書館とニッケイ新聞から23日に刊行された。太陽堂、フォノマギ竹内書店、高野書店、日本語センターなどで取り扱い中。
 日本独自の精神性や文化、歴史を紹介する同講座は人気が高く、「ポ語訳して子供たちに読ませたい」との声が、常々編集部に寄せられていた。その要望を応えるべく方々に要請してきたが、この度、青年図書館からの協力が得られ刊行が実現した。
 今回掲載したのは同講座から5本。東日本大震災時、自宅が被災したにも関わらず自衛隊からの召集に応じて被災地に向かった隊員や、すぐに復旧に向かった電力会社、ガス会社、宅急便、自動車販売店などの〃尽くす〃姿を描いた「国柄は非常時に現れる~東日本大震災と『奉公』」(本紙未掲載)。
 アインシュタインが明治時代に日本を訪れた際、多くの国民が講演につめかけ、「こんなに数学や物理学に関心の高い国民は他にない」などとその国民性に深く感動した逸話「アインシュタインの見た日本」。
 日本には創業1400年を誇る建築会社「金剛組」がある。578年に四天王寺建立のため聖徳太子が百済から呼んだ宮大工3人の一人金剛重光が創業した。それを先頭に創業100年以上の会社が10万社もある。そんな中小企業が長続きする秘密に迫る「老舗企業の技術革新」など。
 日本の話ばかりではなく、日本移民コーナーもある。昨年8月に百周年を祝った平野植民地だが、その最初の3カ月間にはマラリアで80人もが犠牲になった苦難の歴史がある。それを描いた「死屍累々として幽鬼も咽ぶ」(岸本昂一著)も掲載した。
 普段はあまり日本語や日本文化に興味をみせない子や孫も、これをプレゼントすれば「日本を見る目が変る」かも。日本語学校の大人用副読本にしたり、ブラジル人親族、日系企業に勤めるブラジル人従業員に贈呈するなど、いろいろな使い方ができそうだ。

□関連コラム□大耳小耳

 本日出版されたばかりの『日本文化』。14ページにある東日本大震災について書かれた「最後まで防災放送」は、涙なしには読めない。宮城県南三陸町の防災対策庁舎から、避難指示を放送し続けた24歳の遠藤未希さん。庁舎に津波が届く寸前まで「避難してください」と町民に呼びかけ、自分の命と引き換えに多くの町民を救った。本文には無いが、上司の三浦毅さんも津波に呑まれる直前まで放送を続けていた。危険な状況でも勇気をもって使命を全うする日本人の特質に、心揺さぶられる一冊だ。