昨年から訪日就労が再増加=リーマンショック以来初=法務省が統計を発表

 在日ブラジル人は現在約17万4330人(2015年6月時点、法務省発表)で、32万人を数えた08年の半分近くまで減ってきた。ところが、日本の法務省がサイト上で発表した2015年1月~11月の「出入国管理統計」によると、ブラジル人入国者数は5万9084人で、出国者数を4261人上回った。11カ月中の8カ月間において入国者数の方が多く、08年のリーマンショック以降の減少傾向が底を打った形だ。日本の景気回復と、ペトロロン疑惑捜査の進展も加わったブラジル不況本格化―この相乗効果が引き起こした現象と見られ、今年の動向が注目される。

 法務省サイトの「出入国管理統計」によれば、リーマンショック直後の09年だけで6万4287人が帰伯した。戦後移民が10数年がかりで5万人渡伯したから、わずか1年で6万5千人が帰伯移動したのは大きい。
 その後、デカセギの流出は10年が1万3020人、12年は4714人と復調へ。そして14年には出国が5万9735人・入国5万7151人で、わずか2584人の流出のみ。15年1月~11月の数字でついに逆転した流れだ。
 CIATE(国外就労者情報援護センター)の永井康之専務理事は、15年に入ってから訪日就労者は増えているとし、その理由として「ブラジル景気の急速な悪化、日本側の人手不足が考えられる。日本の仕事をあっせんする派遣会社の活動も活発になってきていると聞いている」と現状を説明した。
 在聖日本国総領事館の査証班・鈴木俊哉領事も、デカセギ数の増加を裏付けるように「15年に入って申請数が増え、仕事が忙しくなっている」と話した。ブラジル人数は増えているとはいえ、賃金が安価なアジア数カ国の就労者の方が、より目立って増えている。
 日本の法務省がホームページ上で発表する「在留外国人統計」によると、例えばベトナム、ネパール国籍者は14年6月からの1年間で、それぞれ45・5%、34%も増加している。この急激な増加の理由は、日本の産業・職業上の技能等の修得、習熟をさせる「外国人技能実習制度」が一因とみられる。
 ベトナムやネパールでは賃金水準がブラジルよりも低いため、日本で就労する魅力がブラジルより大きい。企業主から見れば、ブラジル人より安価で雇用できる労働力となる。外国人技能実習制度で入国した外国人は一定期間で帰国しなければならないため、日本政府からすれば永住者にならない外国人として歓迎されている部分もあり、14年までは激減したブラジル人と入れ替わるように増加していた。
 東京五輪に向けて日本の景気が上向いてきたのに伴い、ブラジルからの訪日就労者も回復の兆しを見せ始めたようだ。

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 日本銀行が去年12月に出したレポート「2020年東京オリンピックの経済効果」では、17~18年頃にかけて建設投資が大きく増加すると予想している。伯経済が回復しない限り、今後デカセギの増加も加速するのでは。とはいえ、今年年頭からの世界経済の軟調振りがどう影響するか、今後注目されるところだ。
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 訪日就労者を長年送ってきた宮崎ツーリズモ(サンパウロ市)の宮崎秀人社長は、安倍政権になってから訪日者数が増えたという。去年末に中国の成長が鈍って少し不調だというが、「探せば求人は必ずあるし、行きたい人もたくさんいる」。電子部品などよりも需要が安定している食品工場の募集が多い。「デカセギ経験者でいったん帰伯して結婚し、今回は子連れで行くケースも多い。あと60歳前後の人もけっこう行ってるよ」とのこと。訪日就労は現在は三世までだが、四世向けの特定ビザを解禁すれば、若者が再び行くようになる?