庶民よりも、〃特権〃階級の年金制度見直しを

《特別待遇や超優遇年金を止めないと国庫の収支バランスはとれない》と報じる9月22日付BBC電子版

《特別待遇や超優遇年金を止めないと国庫の収支バランスはとれない》と報じる9月22日付BBC電子版

 ジウマ政権は「国庫の収支バランスをとるために年金改革が必要」と訴え、今まで60歳から年金をもらえた女性も65歳に、今まで支払いしなくても最低給がもらえた地方の農村労働者にも支払いを義務付けるなどの7項目の改正案を検討していると報じられた▼社会的弱者に痛みを押し付けるような方向の改正でいいのかと疑問を感じる。国庫の収支バランスを崩しているのは、元々大した金額をもらっていない社会階層の中層以下ではなく、最上層部ではないかと▼フォーリャ紙11年1月25日付によれば、マット・グロッソ州知事が外遊した間、わずか「10日間」だけ知事代行を拝命したウンベルト・ボサイポ州議会議長(当時)は、知事としての生涯年金を月1万5千レもらう権利が生じたと報じた。わずか10日間で月1万5千レの年金――これを政治家特権といわずして、なんと言うか▼昨年9月22日付BBC電子版も《特別待遇や超優遇年金を止めないと国庫の収支バランスはとれない》と報じた。民間企業で定年退職した場合、INSSからは最大4663レアル。ところが、公務員の場合は最大3万3千レ(最高裁判事)までもらえる。そのような公務員だった夫や妻が死んだ場合、残された配偶者には遺族年金や各種手当を含めて4万レ以上が毎月振り込まれる▼ブラジル年金制度に詳しい英国人エコノミストのブリアン・ニコルソン氏はBBC記事で《民間企業と公務員のこの違いを正当化する理由はない。国庫バランスをとるにはこの特別待遇は再考するしかない》と結論付ける。さらに彼が〃特別待遇〃と見ている分野に《政治家、法曹関係者、軍人への余得(給与以外の利益)、政治犯への賠償、第2次大戦の軍人恩給、それらの遺族》がある▼同記事にあるエコノミストの野上オット氏の意見では《日本の場合、公務員で最も厚遇されている例は教師。ところが、ブラジルで特別待遇を受けているのは公務員管理職、議会や司法関係者。例えば上院の車庫の幹部職員。議会の調理人の基本給が7千レ以上とか》と指摘▼ニコルソン氏は著書で《12月の連邦会計検査院(TCU)報告によれば、100万人いる公務員と軍人の年金受給者への支払いが国庫に負担させる負債は610億レで、CPMF(政府が復活を期する小切手税)の徴税予想の2倍。一方、INSSが対応している民間人2千万人への年金支払い負債は500億レにすぎない》と比較する▼同氏の考えでは、民間と公務員の年金基準を一元化し、より多く受給したい人は補完的な年金制度に加入すべきだ。ただし、憲法が保障する「既得権」に該当する案件だけに改正が困難であることは間違いない…▼年金や恩給支払いなどの社会保障費は政府支出の20%を占める。ちなみに最大の支払い項目は、国債利子支払いや借り換え費用で40%以上を占める。この二つを合計すれば、すでに政府支出の6割以上。同BBC記事によれば、07年の社会保障費は1850億レアルだが、昨年は4千億レを超えたという激増振りだ。これは保健省、教育省、科学技術発展省の予算の合計額より大きい。ニコルソン氏は《最低賃金しかもらっていない人への支払いを見直すのでなく、富裕層への待遇を制限するアイデアが必要》と指摘、まったくその通り。(深)