ジャパンハウス=和風で奇抜な玄関が特徴=原、隈氏が外観を説明=伊勢神宮付近のヒノキ使用

 2017年3月開設を目指す広報文化施設「ジャパン・ハウス(仮称)」(以下、JH)の総合プロデューサーであるデザイナーの原研哉さん(57、岡山)、設計デザインを監修する隈研吾さん(61、神奈川)が来伯し、25日午後、サンパウロ美術館(MASP)でトークショー(講演会)が開催され、約100人が集まった。建築家の隈さんは「ヒノキ」「和紙」を重要資材と捉え、「通行人が思わず入りたくなるような奇抜な建築物にしたい」と語った。

 20年東京五輪のメイン会場設計者でもある隈さんは、「美しく長持ちするヒノキを最重要資材とした。伊勢神宮には最高級のヒノキが使われており、JHには神宮横の山から採ったヒノキを使用する」と説明。
 玄関には格子状に木材をつなぐ「地獄組み」という日本独自の技術を応用し、竹かごのようなインパクトのある見栄えにしたいという。また天井や壁には、和紙をメッシュ加工した素材を利用する。
 それらの発想は、昨年末に視察した日本館からも刺激を受けたという。「建物の一部が池の上に浮くという構造は、60年前だと斬新で難易度も高い。そんな日本館が市民に親しまれるサンパウロ市であれば、JHにもダイナミックで新しいアイデアを注げるのではないか。思い切って新しいことに挑戦したい」と意気込みを語った。
 敷地内には外土間と呼ばれる空間も設置。龍安寺の中庭をイメージし砂利を敷き詰める。「市民に開かれた庭」をテーマとし、「内と外が一体となった空間を想像。通行人が思わず入りたくなるような建築物にしたい」と意欲を見せた。
 原さんはサンパウロ市ほかロンドン、ロサンゼルス3館の総合プロデューサーを努める。長野五輪の開・閉会式や愛知万博のプロモーションを担当した同氏は「緻密、丁寧、繊細な日本文化をどう表現するか」「伝統と最先端技術を上手く融合させ、どう視覚化するか」を課題とし、「五感に刺激を与えるようなデザインにしたい」と語った。
 中身については「日本のハイテク産業は風力発電の中など、目に見えない箇所に取り込まれており伝わりづらい。先端テクノロジーの紹介や茶の湯の心、華道、武士道の他、映画やアニメも持ち込めれば。新しい日本を発見できるようなものにしたい」と展望した。
 日本を良く知る日系人が多いサンパウロ市だけに、ロス、ロンドンよりもさらに突っ込んだ文化の精髄的内容が盛り込まれ、「鮮度のある施設になるのでは」と期待した。
 同日午前中には、サンパウロ市内のFIESP(サンパウロ州工業連盟)で伯字メディア向けに記者会見も行なわれ、TVグローボを始め伯字紙や建築業界紙など40人が駆けつけた。

 

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 それにしても、なぜブラジルで英語名「ジャパン・ハウス」なのか。ロス、ロンドンでは違和感がないだろうが…。日本の日本人はカタカナが大好きだが、当地では英語名の立派な建物はあまり聞かない。せめて「カーザ・ジャポネーザ」にするとか、最低限の〃現地化〃の心遣いが必要では。ドイツのインスティトゥート・ゲーテに習って、「インスティトゥート・アクタガワ」とか。それとも、日本人がブラジルで「英語が世界言語だ」と暗に主張する?
     ◎
 JHの外土間「市民に開かれた庭」には砂利が敷き詰められるとの構想を聞き、警察から苦情が寄せられないかと少々不安に。というのもパウリスタ大通りは抗議行動の舞台であり、ブラックブロックが玉砂利を機動隊に投げつけたりしそうだからだ。さらに「地獄組み」に若者が蛮勇を誇示しようと、よじ登って落ちて怪我をしたりしないだろうか。せっかくの施設であり、日本ではありえない〃使われ方〃も十分に想定してほしいもの。