なぜデウシジオ上議は突然釈放されたのか?

突然、釈放されたデウシジオ上議(Foto: Jane de Araújo/Agência Senado, 10/06/2015)

突然、釈放されたデウシジオ上議(Foto: Jane de Araújo/Agência Senado, 10/06/2015)

 「ジョアン・サンターナ(ルーラ、ジウマの選挙参謀)逮捕以来、ブラジリアは完全に止まった。議会再開早々の最重要案件、社会保障改革も財政緊縮も、それどころじゃないといった感じだ」。26日朝のCBNラジオで政治評論家はあきれた様子で嘆いた▼正月はとっくに終わり、太陰暦の新年もすぎ、カーニバルの翌週からようやく始まった〃ブラジリア新年〃。世界で一番遅い新年が始まったと思ったら、サンターナ爆弾がいきなり炸裂――今年も政治騒動に足を引っ張られて、肝心の「財政立て直し」がなかなか始まらない悪い予感がする▼サンターナ事件が大々的に報じられる裏で、こっそりと不可解な出来事が起きた。19日晩、あのデウシジオ・アマラウ上議(PT)が、最高裁の判断で突然釈放されたことだ▼ペトロブラス(PB)元幹部のネストル・セルヴェロ被告がラヴァ・ジャット作戦で報奨付き供述(司法取引)に応じようとするのを阻止すべく裏工作しているのがバレ、彼は逮捕された。史上初の現役連邦議員の電撃逮捕から85日が過ぎた先週、最高裁のデオリ・ザヴァスキ判事が「もう捜査妨害をする危険性がなくなった」との理由で釈放した。まったく不可解だ▼同上議は今でこそ政治家だが、元はPB幹部職員だ。当時の部下がペトロロン汚職の渦中の幹部職員であり、「公社職員から上議」にという経歴の裏に何かあるのではと以前から疑われていた▼捜査妨害が犯罪なら罰を全うするまで刑務所を出られないはず。なのに「危険性がなくなった」から釈放され、議員活動が再開でき任期が全うできる―と報道された▼何かがおかしいと思いネット検索すると、オ・グローボ紙19日付電子版に《デウシジオは司法取引の交渉後に刑務所を出た》との記事を見つけた。連邦検察庁と司法取引をする交渉が進展し、その恩典として刑務所を出て自宅軟禁に待遇が替えられたとある。位置情報発信機付き足輪を付ける条件で、昼間は仕事、夜は自宅に戻る生活だ。その〃仕事〃場がたまたま上院だった訳だ。これは司法取引に応じた他の供述者と同じ扱いであり、それなら理解できると納得した▼でも不思議なことにテレビのニュースを見る限り、同上議の司法取引の話が出てこない。オ・グローボ紙とTVグローボは同じ系列だが、だいぶ報道方針が異なる。政治評論家のポリビオ・ブラガ氏はブログで《司法取引が完全に成立するまでテレビは報道を控えている》とも書いた▼フォーリャ紙22日付電子版によれば、デウシジオ上議は獄中で関係者に《もし私の議席が剥奪されたら、上院の半分を道連れにする》と漏らしていた。同上議の議席剥奪も倫理委員会で審議中だ。もし剥奪となれば一般市民扱いとなり、セルジオ・モーロ連邦地方裁判事の案件となり、厳しい判決が下される可能性が高い。同上議が最も避けたいシナリオだろう▼同上議は勾留中も、レナン上院議長の特別配慮で月給3万3700レや各種待遇は維持されていた。でもPTは彼が経済委員会の委員長職に戻ることを嫌い、すでにグレイシ・ホフマン上議にすげ替え、官報にも掲載済み。トカゲの尻尾を切るような対応に〃報復〃を考えているのでは―との記事まで…▼彼が全てを告白すればペトロロン疑惑の全容解明に大きく寄与するだろう。もちろん司法取引が成立するかどうかまだ分からない。ただ、司法取引を妨害しようとして捕まったデウシジオが、自らそれを始めるという構図に皮肉を感じる。(深)