映画『ブラジル仏教』製作中=西本願寺 菅尾開教使が監督=「美しさと可能性を再発見」

 「本作で取り上げた3人のブラジル人僧侶は、日系仏教教団が生んだ宝です」――。南米浄土真宗本願寺派(通称・西本願寺)の菅尾健太郎開教使(38、広島県)が1日インタビューに応じ、ブラジル仏教の現状を克明に伝えるドキュメンタリー映画『ブラジル仏教―Três joias』について、進捗状況を明かした。すでに撮影を7割方終え、資金面での協力者を募集中。今後は編集作業などを行なった後、17年に日伯での公開を目指している。

 監督として映画を作るのは今回が2作目。前作『Stream of light』(12年公開)では、ブラジルよりも50年先に布教が開始された米国の浄土真宗の歩みをたどった。在米の日系三世から「お寺とともに育ってきた自分の歴史を見ているようだった。自分の子供にも見せてやりたい」という声が寄せられ、京都新聞やNIKKEY・WESTなど日米の新聞から取材を受けた。
 同開教使は中央仏教学院や行信教校といった仏教専門校で学び、02年に開教使として赴任。05年からマリリア本願寺の主管となり、ポ語の日曜礼拝、仏教講座の開始、NGO(非営利団体)を設立して青少年へ情操教育を行なうなど布教の形を模索してきた。
 なぜ開教使が映画を撮るのか?―その答えとして「開教への尽きない関心がある」と話し、「これまでの成果をドキュメンタリー映画の形で共有したかった」と語った。
 カメラマンは友人のパウロ・パストレロさん。南米で最も注目される国際ドキュメンタリー映画祭『E Tudo Verdade』で審査員賞とフランス大使館賞を受賞した気鋭のブラジル人ドキュメンタリー作家だ。
 本作は3本の短編で構成され、各編それぞれ26分を予定。日ポ語以外に、西語・英語への翻訳も視野に入れる。広く視聴してもらうため、上映館や施設を募集中だ。
 第1部「僧侶になったブラジル人」では、禅宗の孤円師(俗名クラウジア・ソウザさん)、チベット仏教のラマ・パドマ・サンテン師、南米真宗大谷派の釈利満師(俗名リカルド・マリオ・ゴンサルベスさん)の3者が登場。いずれもブラジル仏教界を代表するブラジル人僧侶であり、彼らの求道、仏教観、伝道における変遷から、ブラジル仏教の多様な側面と仏教徒として生きる課題を考える。
 第2部「悟りを求めて」では、民間のブラジル人仏教徒の活動を撮影。大学の仏教学者や、医師でありながら出版社代表としてポ語で仏教書を刊行するエニオ・ブルゴス氏、ブラジル最大の仏教ポータルサイト『ダルマネット』の創設者を取り上げる。
 第3部「ブラジル社会に生きる仏教徒」では、伯仏教徒の社会、文化活動を検証。今後の宗教展望と宗教間対話も扱う。
 同開教使は「日本人が仏教の美しさと可能性を再発見する映画」と述べ、「一世、二世の仏教徒が礎となって広まったブラジル仏教の現状を、目の当たりにするでしょう」と話した。
 制作費として公益財団法人である仏教伝道協会から、資金助成を受けている。現在も資金面での協力者を募集中。また年末まで企業スポンサーも募っている。問合わせは菅尾開教使および『ブラジル仏教』製作チーム(contato@tresjoias.com.br)まで。

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 最近よく聞く「クラウドファンディング」はインターネット上で資金を募る方式を指す。菅尾健太郎開教使は前回監督した『Stream of light』でもネット上で支援者を募り、116人から1万4千米ドル以上が寄せられたという。現在製作中の映画でも4月と5月の2カ月間、同方式で資金募集を行なう。映画製作の進行状況をフェイスブックで公開中だ(www.facebook.com/tresjoias/)。資金が多く集まれば、配給先や翻訳言語の数なども増えるはず。ネット時代ならではの製作配給、今後の展開に注目だ。