新モジ西本願寺=極楽浄土を描くふすま絵=久保開教使9割方仕上げ=モダンな色彩と話題に

久保開教使

久保開教使

 モジ・ダス・クルーゼス市の浄土真宗本派本願寺(以下、モジ西本願寺。清水円了主管)は現在、老朽化等のために移転新築工事を進めている。その新寺内に、色鮮やかな極楽浄土のふすま絵が描かれ、地元で評判を呼んでいる。作者は15年7月に日本から移住した西本願寺開教使で、画家としての顔も持つ久保光雲さん(46、広島)。京都から取り寄せた画材を駆使し、仏教をテーマにしながらモダンな色彩の絵を創り出している。

 久保開教使は京都市立芸術大学で陶芸を専攻。卒業後、陶器だけでなく画家としての活動も行い、これまで関西、仙台、アメリカで個展を行なってきた「絵を描くお坊さん」だ。
 モジ西本願寺の移転にともない、去年の9月に清水主管から4枚のふすまと本堂に絵を依頼され、「極楽浄土の鳥であるクジャクは必ず入れてほしい。その他は自由に」と任された。
 ふすまは高さ2・5メートル、幅が4枚合わせて4・8メートルある大きなもので、金色の下地が塗られている。久保開教使は最初に、縦30センチ、20センチの小さな試作品を描き、絵の構想を膨らませた。
 その後、ふすまと同じ大きさの白紙を用意し、試作品を見ながら線を引き、下書きを作った。ここまでで2カ月半かかっている。大判のトレーシングペーパー(裏写りする特殊紙)を日本から取り寄せ、下書きの紙をふすまに貼り、上からなぞって線をつけた。
 日本の紙製のふすまと違い、表面はプラスチック状に硬くなっている。通常の絵の具では乾燥後に剥がれてしまうため、京都の老舗画材店「大地堂」から、アクリルを含む特殊な絵の具40色と専用の筆を取り寄せた。
 久保開教使はサンパウロ市の西本願寺で僧侶として働きながらモジでの泊り込みを繰り返し、絵を仕上げていった。約30日間を費やし、今年2月初め、ふすま絵を9割がた完成した。絵の写真をインターネットに投稿したところ、日本的な図柄とモダンな色彩が合わさった作風が評判に。
 久保開教使は京都の仏具彩色専門店「今井彩色」で4年間、仏具や寺院内の絵付けをした経験を持つ。今回はあえて伝統的な色使いではなく、「絵を見た人に安らぎを感じてもらい、仏教の入り口になるような」明るい色を選んだという。
 杣山哲英開教総長は、「ブラジルの西本願寺派でふすま絵があるのは2、3カ寺のみだったが、今回モジに本格的な障壁画が描かれた。一人でも多くの方の参拝を願っている」と話した。
 画家で俳優の金子謙一さんは、実際にモジ西本願寺を訪れて鑑賞した。絵がわずかに未完成だったと前置きした上で、「後世まで残る絵は、打算的にならずに描かれたもので、それは非常に難しいこと。このふすま絵は童心のような純粋さで描かれている。それが皆に好まれている理由ではないか」と評した。
 新モジ西本願寺の落慶法要は6月26日。それまでに久保開教使は、仏像を安置する本殿の壁一面にも極楽浄土の絵を描く予定だという。同寺に連絡すれば、ふすま絵を見学することができる。問い合わせは清水主管(11・4799・0530/同・98529・2342)まで。

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 移転中のモジ西本願寺に描かれたクジャクの絵。作者の久保光雲開教使は絵の構想を練るため、わざわざサンパウロ市のサンパウロ動物園までクジャクを観察しに行ったが、「本物のクジャクの顔は迫力がありすぎて怖いので、愛らしく描くのに苦心した」のだそう。絵画作成の様子は、久保開教使のフェイスブックで見ることができる(https://ja-jp.facebook.com/koun.kubo