■ひとマチ点描■ア・マッシャード最後の一世

松本一成さん(79、長野)と思い出のお茶箱

松本一成さん(79、長野)と思い出のお茶箱

 以前、サンパウロ州アルバレス・マッシャードを訪れた際、松本一成(いっせい)さんが案内してくれた。コチア青年として1955年に移住、現在も農業を営む。
 来年百周年を迎える伝統ある同地へ、最後に移住した日本人であり、最後の一世となった。日系団体会長を10年務め、名誉市民に。「敬老会では長年お祝いする立場だったけど、今年から祝われる側」と照れくさそう。
 自宅横の養鶏小屋ではかつて1万羽ほど飼育した。「ここに越してから最初の5年間は電気を引かなくて、ランプで生活していた」。
 倉庫には、筆記体で「マツモト・サントス・ブラジル」と書かれた思い出のお茶箱。移民船の出航前に両親が餞別として送ってくれたもので、当時使っていた作業着や肌着等が4農年分ぎっしり詰まっていた。
 妻エミリアさんは「最初に会ったときの服はボロボロで恥ずかしかったね」というと、「忙しくて買いに行く暇がなかったんだよ」と笑い飛ばした。(桃)