オーリャ!

 「ぐいっ」と引っ張られたかと思った時には、もう遅かった。バッグから折り畳み傘が抜き取られており、コラム子にとって少々出費が増えることになった。混雑したメトロの乗降時のことだ。
 初めて盗難に遭った。痛感したのは治安の悪さだ。その傘は日本製で100レアルした。お気に入りだったので犯人を追いかけようと思ったが、「危険かもしれない」と思い留まった。
 貧富の差、教育、倫理観など、ブラジルには治安を悪化させる要素が数多くある。そんな中、貧しくとも安易に他人のものを盗まず、「武士は食わねど高楊枝」で乗り切る日本人の精神は、日系社会が信頼を築くのにも一役買っていたのではないだろうか。
 子孫の代まで「犯罪率の少なさ」でブラジルに貢献するためにも、日系社会の人々は、改めて〃日本人の美点〃を確認し、子や孫たちに伝えてほしいところ。(将)