安倍首相「日系人と相思相愛で」=前総領事の福嶌氏が来聖=将来担う新世代育成へ奮起

 前在聖総領事で駐亜大使の福嶌教輝氏(57)が19日午後、ブラジル出張にあたり本紙に来社した。中南米各国に駐在する大使の会議で、安倍晋三首相から直々に「日系社会と相思相愛で働け」という言葉があったと明かし、「今こそ亜国日系社会との関係を再構築する時。連携強化、日本政府の政策見直しを図り、将来を担う人材を育てたい」と意気込みを語った。

 2012年7月から在聖総領事を務めた福嶌大使は、2年半の任期中、153カ所の集団地を訪れ多くの日系人から親しまれた。昨年7月から約20年ぶりの亜国勤務に就いている。
 商工会議所昼食会で講演するため来伯し、19日に本紙を訪れた。「日系社会に改めて感謝。赴任中、皆さんが温かく迎えてくれたからこそ、日系社会の支援強化に使命感を感じるようになった」と謝意を見せた。
 福嶌大使は、日本側でも支援へ機運が高まっていると見ている。大使会議という会合では安倍首相から、「日系社会に対し相互相愛で働きかけてほしい」という言葉が掛けられた。「要は日本政府も愛情を持って取り組んでいるということ。総理がそんな宣言を下すのは異例」と、驚きを持って強調した。
 安倍首相来伯後、当地ではJICAボランティアが倍増し、サンタクルスや友好病院への援助(合わせて約90万米ドル)も行なわれたばかり。「梅田(邦夫駐伯)大使が懸命に働きかけた結果。私も日本政府へ積極的に要求しなければ」と、隣国でも実現を図っている。
 約6万5千人という亜国日系社会では、新しい組織の活動が目立つという。「50代前後が中心の日系団体『セントロ・ニッケイ』は85年に創立。イベントで日本文化に触れ、若者が集り、新しい組織が動き出す。良い歯車が回りだしたところ」と好循環に喜びを感じている。
 かつて寂れ気味だった日本庭園も、今では年間50万人が来場する街の人気観光スポットになった。管理するのは亜日文化財団(Fundacao Cultural Argentino-Japonesa)で同国伝統の日系団体だ。とはいえ、かつて100あった進出企業は現在半減。ただ政権交代により風向きが変わったと見ている。「それ以降、欧米企業の視察は引きもきらない。今、来なければ出遅れる」と当地の商議所にカツを入れにきたようだ。
 「若手とベテラン組織、企業が一体となって日系社会を支える時代を迎えようとしている。将来を担う〃新世代日系人〃を育てるために、我々も協力し、日系人政策の拡大、再構築を考えていきたい」。
 亜国最初の日本人とされる牧野金蔵から、今年でちょうど130周年。サンパウロ市で愛された福嶌大使はお隣アルゼンチンでも日系人、企業のため奮起している。

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 亜国の近況を伝えた福嶌教輝大使。「20年前の赴任中は5軒だった寿司屋が今は300軒。最大規模の日本祭り(ラプラタ)は1万5千人で他は4、5千人だが年々増加している。日本文化に親しもうという気持ちの表れ」と笑顔。ただ当地と比べると、「政治家はチャコ州選出の下院議員テラダ・アリシアさん(三世)のみ。市議や市長もいない。一大実業家も珍しい」とちょっと悔しそう。