根を張る日系宗教の最先端=ブラジル岡田茂吉財団 ミゲル理事長に聞く=同志社卒、環境問題に注力

 ブラジル世界救世教は、日系宗教の中でも最もブラジルに根を深く張る教団の一つだ。昨年10月、教団トップにマルコ・レゼンデ本部長(60、4月23日既報)が就任したのに加え、両輪的存在の「ブラジル岡田茂吉財団」の理事長にも14年5月、非日系のミゲル・ボンフィンさん(59、ブラジリア)が就任していたからだ。ともに日本の有名大学を卒業、流暢に読み書きまでこなす。同教団信者の99%は非日系、そしてトップも。なぜ日本宗教哲学にブラジル人は惹かれるのか。今回はミゲルさんにその魅力を聞いてみた。

 ミゲルさんはバイア州南部ジュキエ市生まれ。父の仕事の関係で首都遷都(1960年)の後、幼少期にブラジリアへ転住、そこで育った。病気に苦しんで治療法を探していた父は世界救世教と出会い、癒された。その感謝を込めて自分の子を伝道師にしようと思い立ち、ミゲルさんに白羽の矢を立てた。
 18歳頃から布教活動を始めたミゲルさんは、渡辺哲男前理事長に出会って話を聞いてから、「もっと知りたい」と熱望する。「なんとか教えを日本語で読みたい」と強く思うようになり、教団の派遣で日本へ2年ほど留学した。
 続いて、岡田茂吉生誕100周年の準備を兼ねて81年頃に再訪日。同期のマルコさん(現本部長)とともに、「なんとか大学に行きたい」と粘り、同志社大学社会学科社会学部へ入学した。
 とはいえ、「勉強はつらかった・・・」と当時を振り返る。ブラジル人がまったくいない時代の日本に渡り、2人は大学入学前の熱き青年時代の1年間を、アパートの同じ一室で過ごした。竹馬の友ではなく「悪友だね」と笑い飛ばす。
 情熱的なマルコさん、理知的なミゲルさん、まるで陰陽の補完関係のようだ。マルコさんは日本の教団の国際部に残ったが、ミゲルさんは卒業後、帰伯して教団の仕事を続けた。2010年から教団とは別組織の財団に移籍、そこが管理する「グァラピランガ聖地」の副部長に就任した。
 同財団は「人間の幸せは自然尊重から」という創始者・岡田茂吉の思想を基に1971年に発足した。主に環境問題などの社会活動を担う。
 6月4~8日にはサンパウロ州政庁で、環境行政関係者や大学教授が参加する第21回環境法国際会議が行われた。各国から600人も集まる、環境関連では南米最大の国際会議だ。財団も常に参加、1人だけ選ばれる「環境功労賞」に創始者・岡田茂吉が昨年選ばれた。死後に授与されるのは異例のケースだという。
 ミゲルさんは「人間も自然の一部であり、自然を尊重することは道徳心を養うことになる。感謝が感謝を呼び、幸せや平和に繋がる。その思想の素晴らしさが環境会議でも評価された。とても嬉しい」と自らが惹かれ信じる日本的哲学を、ブラジルの環境問題解決に適応してきた成果を振り返り、穏やかな笑みを浮かべた。

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 第21回環境法国際会議でサンパウロ州ブロッタス市のオルランド・ネット市長は、「20年前にブラジル世界救世教の渡辺哲男前理事長から岡田茂吉の思想を聞いた。それから新時代の都市社会を目指そうと計画して植林等を行ない、今では緑が一番回復した都市となった」と発表したという。渡辺氏との出会いが環境に配慮した都市作りのきっかけとなった訳だ。同財団はそれ以外にも、河川の汚染問題や自然農法の研究活動に加え、山月流生け花や陶芸、美術などの芸術活動も行ない、日本文化哲学の普及を行っている。
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 同財団は、ブラジル教育省の依頼により、州立小学校で環境教育を行う。学校内で野菜栽培し、子供から自然にまつわるエピソードを集め、マンガとして配布する工夫もしている。さらに軽犯罪を犯した青少年向けに、社会復帰のための教育プロジェクトも。自然栽培や生け花などを通して、犯罪への反省と、道徳を主とした新しい価値観を身に付けさせるプロジェクトだ。日本食や音楽、アニメと同じく、宗教もブラジル文化に深く影響を与えている。