東西南北

 既にご存知の方も多いように、リオ五輪の開会式は大成功に終わった。この日は開会前にテメル大統領代行に対する抗議行動があり、マラカナンでもテメル氏への野次も聞こえたが、サッカーのW杯のときのようにそれが主な話題になることはなかった。音楽で参加したカエターノ・ヴェローゾやシコ・ブアルキも熱心な労働者党支持者として知られているが、開会式会場で歌う際にそれを表すことはなかった。そこはさすがに五輪の場。どんなに現実世界で醜い紛争や厳しい現実があろうとも、せめてこの開会式ぐらいは争いもなく世界平和の理想に浸りたいもの。世界中の多くの人にそれが感じられたら成功といえるはずだ。
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 その五輪の聖火台に火を灯したヴァンデルレイは、本日の記事の本文中にも書いたように、マラソンをトップで走っていたにも関わらず、闖入者に突如止められたトラブルで、泣く泣く銅メダルに終わった五輪史に残る悲劇のランナー。その彼は、本国開催の五輪での大役に「今日、やっと金メダルがもらえた気分だ」と喜びを語った。なお、この大役に関してはサッカーの神様ペレという説もあったが、背中の手術後で断念している。
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 今回のリオ五輪での初のメダルは10メートルのエアピストルのフェリペ・ウーの銀だが、これは不思議な縁がある。それはブラジルが史上初めて五輪で金メダルを取ったのが、1920年のアントワープ(ベルギー)大会での射撃選手ギリェルメ・パラエンセだったことだ。しかも、射撃でのメダル獲得はそれ以来96年ぶりのこと。五輪の神様が取っておいたのか。