サンパウロ市ジャパンハウス=和紙職人匠の技、ブラジル人に伝授=日本の美意識、共同作業で発信へ

和紙のばらつきを見極める小林さん

和紙のばらつきを見極める小林さん

 2017年3月にサンパウロ市で開設を目指す、日本政府による広報文化施設ジャパンハウス(JH)。その天井や壁、扉の一部内装材を手掛けるため、越後門出和紙代表の小林康生さん(62、新潟)が先月26日に来伯した。サンパウロ州イタイアツーバ市にある戸田建設の倉庫内で、ブラジル人従業員に製作方法をみっちりと伝授し、外国での初仕事を終えて5日帰国した。
 今事業はJHの設計デザインを監修する建築家、隈研吾さんから依頼を受けたもの。和紙と金属の融合に挑戦するという世界初の試みという。小林さんは「伝統は時代の中で変わりゆくもの。これが将来の新しいスタイルとなるかも」と、期待に胸を躍らせる。
 JH地上階を覆う内装材は、楮の白皮を原料とした和紙を溶解させた液体に、エキスパンドメタルという網状加工された金属を濾し、付着したものを天日乾燥させて完成される。表情豊かに見えるよう、天井部は和紙を立たせるなどの趣向を凝らしており、一月には新潟でテストをしてきた。
 同地では二日がかりの作業だったが、当地では乾燥が速く時間は半分に短縮できた。現場も和気藹々としており、「初めてやる仕事なので、皆同級生みたいなもの。人間のやる仕事なので完璧は目指していない」と語る。
 和紙の付着がまばらな箇所もあるが、「そのほうが自然でいい。これが日本の美的感覚」とうなずく。「化学の白は光を反射するが、自然の白は光を吸収する」と語り、自然を感じさせる柔らかな空間となりそう。今後は、ブラジル人従業員が作業を引継ぎ、約1千平米の内装材を完成させる。