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 神戸の日伯協会機関紙『ブラジル』972号が7月に刊行された。9月のパラグアイ日本人移住80周年出席をひかえて、眞子内親王殿下が7月15日に移住ミュージアムを2時間余りご視察されたとか。11月19日には同協会創立90周年記念式典を予定。興味深いのは9月24日午後2時半からの90周年記念事業「移民船出港体験乗船会」だ。募集人員60人、参加費大人2500円で、《出港時にテープでの見送りを演出し、参加者に移民としての船出の雰囲気を体験していただこうという試み》とのこと。日本にどの程度、移民船体験希望者がいるものか。実は、当地のほうが多いかも。
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 旧神戸移住センターに残された有名な「落書き」の張本人、コチア青年の佐藤修司さんが同館を再訪したと同機関紙『ブラジル』972号で紹介されている。1961年4月に神戸を出港直前に落書きし、09年6月に同会館改修工事で見つかって保存され、今では「移民遺産」だ。いわく「優秀青年成 三重県 飯田 佐藤 西島 上三名 四月二日午後四時あるぜんちな丸にて渡航ス」。同紹介文には佐藤さんの座右の銘も。日本の恩師が移住1年目に送ってきた手紙の言葉で《一にも辛抱、二にも三にも辛抱、死ぬまで辛抱、いつでも、無理でも辛抱、泣いても辛抱、病の時も、苦しいときも辛抱、とうとう辛抱した、そういえる人になってくれ》というもの。「その通りに生きてきたと思う」と締め括られている。
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 『楽書倶楽部』第34号が8月に刊行された。「詐欺三題」(住谷久)では、散歩先で「人探しを手伝うだけで2万5千レアルもらえる」と声をかけられた実話、「この登録書に署名したら薬がタダで手に入るようになる」と薦められた体験など。「一杯のウドン」(阿部五郎)では、サントス厚生ホームに入所したらバストス時代の幼馴染になんと80年ぶりに偶然再会した話。「素晴らしい本」(小野寺郁子)では二宮正人・ソニア夫妻による『両陛下御製和歌選集』に対し、「大層素晴らしい内容と、隅々まで敬意と心配りの行き届いた誠に立派な本」と紹介している。問合せは日毎叢書企画出版(電話=11・3341・2113)まで。