腰痛改善コラム=サムライの姿勢=メディカルトレーナー 伊藤和磨=(11)=腰痛にならないお尻の使い方 (2)

 前回は、「猫背を防ぐお尻の使い方」についてご紹介しましたが、皆さん、実践されていますか? 美尻効果もあるので、普段からお尻の割れ目を閉めて立つように心がけて下さい。

最も重要な動作「しゃがむ」

 今回のテーマは、「しゃがむ」です。
 しゃがむ動作は、赤ちゃんが立ち上がるときに行う動作ですが、人種や性別に関係なく、全世界の子供たちが教わることなく完璧にやってのけます。
 しかしながら、座ってばかりの現代社会では、「しゃがめない大人」が急増しているのです。しゃがむことは、人間の動作パターンの中で、最も重要だと言っても過言ではありません。正しいフォームでしゃがむには、足関節と股関節の柔軟性、上半身の筋バランスと脊椎の可動性など、沢山の要素が求められるからです。
 もし「毎日やるべきトレーニングを1つだけ教えてほしい」と頼まれたら、私は「フルスクワット=しゃがむ」を選びます。それほど、深くしゃがめることが大事なのです。

「ヤンキー座り」は武士から始まった?

 「ヤンキー座り」をご存知でしょうか?
 日本版の「ヤンキー」とは、いわゆる「不良」を横文字にしたものですが、ヤンキー座りは、大股を開いてしゃがんでいる状態のことです。
 見方によっては、「うんこ座り」とも言えます。東南アジアやアフリカでは、今もしゃがんでいる人を頻繁に見かけますが、都市部に住む人々でしゃがんでいる人は滅多にいません。だから、ヤンキー座りをしていると、「教養がない奴だ」と小馬鹿にされるわけです。
 けれども、ヤンキー座りが不良やツッパリだけの座り方かというと、そうではありません。「武士道」は、日本人の精神性の基盤となっていて、あらゆる面で手本にされていますが、実は、その武士たちがヤンキー座りをしていたのです。

侍が座る姿勢は「ヤンキー座り」

侍が座る姿勢は「ヤンキー座り」

 昔の日本人なら、誰でも深くしゃがめたのに、今ではしゃがめない人の方が多くなってしまいました。和式便所がなくなり、洋式便所になったことが原因と指摘する専門家もいますが、いずれにせよ、何十万年という歳月を経て受け継がれてきた動作パターンが、失われつつあることは確かです。

しゃがみ方の実践

 深くしゃがむのは、脚が長くて股関節が硬い欧米人にとって、とてもハードルが高い格好です。だから、フィットネスの業界では、深くしゃがめるようにするための、様々なプログラムが存在します。
 本来、スクワットは立った状態から始まる動作ではなく、床から立ち上がる動作です。つまり、「トップダウン」ではなく、「ボトムアップ」ということです。スクワットのフォームを正しく簡単に覚えるには、椅子に腰掛けたところから立ち上がる練習を繰り返すのが賢明です。

実践

 椅子の先端に座り、足を肩幅に広げます。つま先を15度外側に向けます。両手を太ももに置き、下腹に力を入れ、視線を斜め上に固定したら立ち上がります。立ち上がるときに、膝が内側に入らないように、つま先と同じ向きに維持することが大切です。
 立ち上がったら、また出っ尻にして元の位置に戻ります。この動作を10回?16回繰り返します。座る前に鼻で息を吸ったら、動作中は呼吸を止めて、立ち上がるときに口から息を吐きます。動作中は、つまさきよりも内側に入らないように注意してください。

postura

 強度を上げる場合は、イラストのように低い台に腰掛けたところから、立ち上がる練習をすると良いでしょう。この動作パターンを練習していれば、お尻をダイナミックに使ったしゃがむ動作を、末長く維持することができます。是非、チャンレンジしてみてくださいね。

【プロフィール】

プロフィール画像伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身 

メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。