JICA=日系社会ボランティア30周年=リレーエッセイでたどる絆=第3回=いつのまにかブラキチに

50周年誌編纂の第1回会議の風景

50周年誌編纂の第1回会議の風景

 日本人移民史、日系人・日系社会に関する調査研究を専門とする、サンパウロ州サンパウロ市のサンパウロ人文科学研究所(以下、人文研)へ配属され、役員の高山儀子(のりこ)さんと共に同研究所の「50周年記念誌」編纂に携わっています。
 私は元々、「大航海時代のポルトガルによる航海事業」に関心があり、研究の道へ入りました。大学院を出た後、東海地方の大学等で教鞭をとりつつ研究していた際、三重県の日系ブラジル人集住地域の共同調査へのお誘いを頂きました。
 ここで初めてブラジルとの繋がりが出来、そのご縁で2012年から2014年にかけて、サンパウロ大学の客員研究員としてブラジルに滞在する機会を頂きました。
 最初の滞在中、宿探しやビザの延長など、様々な問題が生じました。そんな時に手を差し伸べてくれたのが、ブラジル在住の日本人や日系人の方々、そして県人会等の各種日系団体でした。これがきっかけで、日本人移民史、そして日系社会に興味を持ち、通い始めたのが現在配属されている人文研です。
 当時の人文研は引っ越しの最中で、そのお手伝いをさせて頂く中で、顧問の宮尾進さんや鈴木正威さんを始めとした役員の皆さま、そして職員の星大地さんや松阪健児君と知己を得ることが出来ました。
 日本への帰国後は、東海地方の看護大学等でポルトガル語を教えることになりました。将来、医療現場で働く学生たちに教えることは、日本在住の日系ブラジル人への間接的な助けになると思い、拙いながらも精一杯講義を行っていました。
 しかしながら、どうも既に「ブラキチ」となっていたようで、再びブラジルに戻りたい、という気持ちが自身の中で大きくなってゆきました。
 そんな折、日系社会ボランティア制度を通して、人文研が青年ボランティアを求めていることを知りました。お世話になったブラジルの日系社会に直接恩返しが出来るまたとない機会であると思って応募し、幸いにも合格しました。
 自分が「青年」なのか「中年」なのか、少しだけ悩んだのはここだけの秘密です。しかしながら「一生青年」と元気な声を挙げるコチア青年の皆さまの姿を見て、勇気を頂いております。
 日系社会ボランティア制度の30周年にあたる本年にブラジルへ派遣されたことに喜びを感じています。各受入団体・地域の方々と先輩たちとで紡いできた、日系社会と日本との絆を途切れさせることなく未来へと繋げて行けるよう、任務を全うする所存です。
 現在、私は人文研の成立前史について調べています。人文研、またその前身とされる土曜会や人文科学研究会と関わりが有る方がいましたら、是非ともお話をお聞かせ下さい。連絡先は人文研(Eメール=ngo@cenb.org.br 電話=11・3277・8616)まで。

 

長尾直洋(ながお・なおひろ)

【略歴】三重県出身。38歳。2012年から14年までサンパウロ大学の客員研究員としてブラジル滞在。サンパウロ人文科学研究所に第32次日系社会青年ボランティアとして今年6月に派遣された。人文研の50年史編纂。