在外日本人だけ切り捨て=東京五輪前に帰郷遠のく=JRパス販売、来年3月まで

在外日本人は来年から使えなくなるジャパン・レール・パス(提供/flickr)

在外日本人は来年から使えなくなるジャパン・レール・パス(提供/flickr)

 海外在住日本国籍者は来年4月から「ジャパン・レール・パス(以下JRパス)」が購入できなくなる――JRグループは11日、JRパスの利用資格変更と日本国内での試験販売について発表し、これを明らかにした。それによれば、海外在住の日本国籍所有者への同パス販売は2017年3月31日で終了し、日本国内での引き換えは同年6月30日までとされている。今まで利用してきた当地在住者からは強い不満の声が上がっている。

 JRグループの発表では「JRパスは観光のため訪日した外国人旅行者が鉄道で日本中の旅行をするために設定された」とし、「来年3月31日に終了する在外日本人への販売は特例として取り扱ってきた」とだけ書かれている。
 その結果、日本国外に住む日本国籍所有者で、「居住国の永住権取得者」「日本国外に居住する外国人と結婚している人」への販売が来年3月末で終了する。4月1日以降の販売対象は「短期滞在」の入国資格により訪日した、日本国以外の旅券のみを有する外国人旅行者に限定される。
 JRグループから当地旅行社に今回の変更を説明するプレスリリースのリンクが送られたが、海外在住日本国者だけを資格外に変更した理由は伝えられていない。
 そこで本紙は14、18日の両日、JR東日本公式ウェブサイトにある問い合わせフォームから、今回改訂に至った経緯等を問い合わせたが、23日午後4時時点で返答はない。
 サンパウロ市在住者に今件を知らせると、多数が困惑の声を上げた。
 野口博文さん(愛知県、75)は「そりゃ残念だ」と嘆き、「確かに、かなりの数の在外日本人が乗り放題を満喫しているだろうし、儲からないよね。でも、海外で頑張っている民間外交人のような在外日本人の特権を消すのか。まるで切り捨てだな」と怒りをあらわにした。
 母の誕生日を祝うため毎年帰国し、親族と顔を合わせているという八木静代さん(兵庫県、79)は、この10月に帰国した際もJRパスを利用した。「母の誕生日に帰る度使う。今年は百歳の誕生日だった。あと4、5年使えると嬉しいのだけど・・・」と残念がる。
 ブラジル健康表現体操協会会員の牧山純子さん(長崎)、水源里栄さん(静岡)、大野宏江さん(京都)は「えぇっ!」と一斉に驚き、2020年に開催予定の「第6回国際健康表現体操フェスティバル」について緊急会議が始まった。「今年もJRパスで北から南まで周った。皆も次回の参加を楽しみにしている」と顔を見合わせ、今後の活動を危惧した。
 東京五輪前に帰郷が遠のくような今回の発表に、続々と利用者からの反発が上がっている。

□関連コラム□大耳小耳

 JRパス利用資格変更撤廃の再考を求める『「JRパスを使い続けたい」在外邦人の会』の署名収集のページが12日に作成された。現在4530人が署名しており、目標の5千人まであと少しといったところ。同会のフェイスブックでも海外居住・経験者、日本居住者など様々な立場から意見交換が行われている。今回の変更について、JRグループからの説明を多くの在外邦人が求めているようだ。
     ◎
 JRグループは少なくともきちんとした説明をすべきだ。「在外日本人への販売は特例として取り扱ってきた」とあるが、今回、在外日本人だけを資格外に変更した説明にはなっていない。だいたい「外国籍者」と「在外日本人」をなぜ区別する必要があるのか。同じように日本を訪れて外貨を落とすのに。在外日本人からは権利をとりあげ、外国人だけ優遇する結果になるこの決定は、在外「日本国民」を差別するものでは。「海外日系人協会などが、もっと抗議活動をすべきではないか」という声が上がっている。