東西南北

 事故から一夜明けた11月30日も、ブラジルではシャペコエンセ・ショックに見舞われたままだったが、今回の事故は同チームの選手だけでなく、マスコミが20人ものジャーナリストを失った点も特筆すべきだ。なくなったジャーナリストの中には、辛口サッカー評論家として有名だったマリオ・セルジオの名もあった。今回の事故を受け、グローボ局のサッカー中継の名物アナウンサー、ガルヴォン・ブエノは「年内は実況をする気になれない」と強い気持ちの動揺を語っているが、その心理には、同業のスポーツ・ジャーナリストたちを失ったショックもあるのだろう。いずれにせよ、失ったものの大きさは計り知れない。
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 墜落死したシャペコエンセのカイオ・ジュニオール監督は、2009年にヴィッセル神戸でも采配をふるっており、Jリーグのファンの間でも知られていた人物だ。カイオ氏は先週、スル・アメリカーナ杯準決勝に勝利し、決勝進出を決めた直後の会見で、「もう、たとえ今日死んだとしても幸せだ」と、かつて無名だったチームが南米の大物クラスと戦えるまでに成長したことを喜んでいた。それが本当に命を落とすことになるとは何とも悲しい。
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 そのカイオ・ジュニオール監督の息子のマテウス氏はパスポートを忘れたため、事故機に乗れず、命を取り留めた。また、シャペコエンセの選手の中でも、怪我をしていたために遠征に参加できなかったことで救われた人もいる。こうした人たちが、シャペコエンセの良き伝説を後世に残していってくれることを願うばかりだ。