JRパスに関する再考願い=65歳以上に特例継続を=サンパウロ州リベイロン・ピーレス在住 川添 博

ジャパンレールパス(提供: Amy Jane Gustafson, 2013(Flickr))

ジャパンレールパス(提供: Amy Jane Gustafson, 2013(Flickr))

 JRはレールパスを海外在住の日本国籍者に対し、本年の3月以降は販売しないと決定しました。レールパスは訪日外国人を増やすために定められたシステムです。外国に住む者にとり非常に高くつく日本国内の交通費を押さえ、訪日を促すための数少ない有用なシステムです。
 ところが訪日外国人が二千万人になったから、もう外国に住む日本国籍保持者の助けは必要ないとばかりに特例を廃止されたのです。
 そもそも「特例」として扱う事に合点がいきません。その本質からすれば外国定住者にはレールパスを認めてもしかるべきと思われます。よってその決定に対しブラジルに住む者として再考を嘆願する理由を、以下に挙げさせていただきます。
(1)外国人に認められるというのであれば、外国に30から40年以上住む者は当該国における「准外国人」とみなし、購入を認めるのが妥当です。
 訪日外国人の増加は、JRのみならず日本国への経済的効果をもたらします。それと同等の比重で両国の友好への理解促進という側面も持ち合わせています。
 当該国における良き市民として長きにわたり生活している方々は、その事自体が両国の友好に寄与しているのです。その寄与を換算するならば経済的効果は大きいのです。特例廃止によるJRへの経済的効果よりはるかに大きいのです。
 レールパスの側面的目的を果たしている方々への支援はあってもよいのではないでしょうか。
(2)ブラジルに住む日本国籍者の多くは、好むと好まざるとにかかわらずブラジルにおいて、日本をしょって立っている意識を持っておられるのです。
 どうしても外国籍でなければ認められないというのであれば、ブラジルに帰化するという選択肢もあります。しかし、それには心情的になかなか踏み出せない事情もあります。あらゆる面で日本を心の支えにして困難と向き合っている多くの方々から支えを取り上げないでいただきたい。
(3)ブラジルでは60歳以上は政府補助によりバス、列車は原則無料です。発展途上国でもこのような補助があります。日本ではおおかたのところで定年は65歳以上です。そこで65歳以上にレールパスの購入を認めても、今までよりはJRの経費は押さえられます。特例廃止で実質的な値上げをしても、訪日しない人、もしくはJRを使わない人が増えるかもしれません。そうなると「虻蜂取らず」(二つのものを同時に得ようとして、両方とも逃すこと)です。
(4)日本を出たからこそ、改めて判る「日本の良さ」を伝えることができる日本国籍保持者は、「民間外交官」と見なされてもよいのではないでしょうか。その者が日本国籍を保持するが故に不利益を被り喪失感を持つ事は、長い目で見れば日本国の損失です。どうあっても避けていただきたい。
(5)長きにわたる海外生活の中で、郷愁の思いでしばらくぶりに訪日される方にとり、レールパスの特例は、故国のありがたさを感じさせてくれます。それは日本を誇らしく思う気持ちにつながります。その気持ちにブレーキがかかるようなことは避けていただきたい。
(6)家族や団体で訪日する時、日本国籍保持者だけが不利益を被るようであれば、それらの方々に不満が募るだろうし、同行の子や孫に、子供が生まれても日本国籍の保留を勧めにくくなります。これはお金では買えない、在外邦人の基本的存在意義にも連なる事なのです。
    ◎
 海外の日本国籍保持者によるレールパスの購入継続によるメリットは、特例廃止による経済的メリットよりも大きなものがあると推測されます。
 折中案として条件を変更することにより、継続は可能であり、資格の書類手続についても再度吟味し方策を探る事は可能な筈です。
 世界の中で、緻密で正確無比を誇るJRなら出来る事だと思われます。よろしくご高配をお願い申し上げます。