日本とブラジルの《伝統》

 「真の日本の姿」を謳うJHに対して、コロニアからは不安の声も耳にする。「これまで当地で育んできた日本文化が否定されるよう」というものだ。
 だが、組立工事を終えた檜のファサードを見て、「真の姿」の意味がようやく腑に落ちた気がした。それは、古来より重宝されてきた檜を、モダンな形に変幻させたもの。すなわち、JHが伝えているのは「伝統」に過ぎない。
 古くからのものを「そのまま伝える」ことを《伝承》というが、「時代に合わせて絶えず革新を遂げてゆく」ことを《伝統》という。日本は創意工夫を凝らすことで、発展を遂げてきた国であり、《伝統》そのものだ。
 そう考えれば、当地で変化を遂げながら育まれた「日系文化」は、逆にブラジルが誇る《伝統》の一つの姿かも。現代日本の要素を備えたJHと協働しつつ、さらに日本文化を普及させたいところだ。(航)