《ブラジル》日本語学校の改革元年に=聖南西が立て直しを議論=「5年、10年で無くなるかも」

「日本語教育の未来のために協力を」と語りかける渡辺久洋会長(後姿)

「日本語教育の未来のために協力を」と語りかける渡辺久洋会長(後姿)

 「このままだとあと5年、10年で日本語学校が無くなるかも」――そんな切実な問題意識を共有した「聖南西地区日本語学校運営改革を進める会」の第2会合が8日午前、ソロカバ文協会館で行われ、活発な議論が繰り広げられた。聖南西教育研究会の第204回定例会の中で、特別に時間をとって話し合われた。

 

 「運営改革を進める会」発起人の一人、聖南西教育研究会の渡辺久洋会長は、「うちの地区は1996年には19校あったが、現在は8校に減った。このままでは10年後に日本語学校はほぼなくなるか、規模縮小で活気を失った状態になっているかも」といかに改革が必要かを訴えた。

 例えば最盛期の1991年に生徒数は1152人を超えていたが、2016年は205人。この26年間で生徒数は17%まで激減した。おもな原因は、少子化が進み、教育費用がかかる中で英語優先となり、かつてのような価値を日本語学校に見出せない時代になっているためという。

 そのため今年を「聖南西地区日本語学校の運営改革元年」と位置づけ、文協、保護者、教師が膝を突き合わせて話しあう場として召集された。渡辺会長は「今、行動に移さなければ。衰退を止めるには時間が残されていません」と真剣に呼びかけた。

 田頭(でんどう)明子JICAシニアによる問題提起の講演のあと、集まった45人は5グループに分かれて活発に話し合った。

 C班ではレジストロ文協の福澤一興会長が、「うちの地区では継承の時代は去っている。もっと一般のブラジル人向けに学校になっている。日本語だけではだめ。間口を広げて日本文化全般を教えないと生徒が集まらない」と口火を切った。

 他にも「田舎では『会館はジャポネースしか入れない』という先入観をもったブラジル人が多い。文協の会員になったり、日本語学校に子供を入れたら、土日のイベントを義務で手伝う必要があると思っている人も多い。もっと敷居を低くしないと人が集まらない」との意見も。

 別の参加者からは「和太鼓、民謡、漫画やアニメ、ソロバン、将棋、折り紙、柔道、日本食などの講座を文協が設けて敷居をさげ、日本文化への関心を深めたい人に日本語教室へと進んでもらえばいい。いきなり日本語ではなく、敷居を低くして徐々に日本語の方へ」との意見が出た。

 ソロカバ文協の松島ロベルト会長も「僕も日本語ができない。だが日本語学校では言葉を教える以上に、日本人の心、文化、考え方を伝えてほしい」との期待をのべた。ソロカバ日本語学校は生徒90人と増えており、半数が成人。同地周辺に展開する日系企業に就職希望のブラジル人が増えているという。

 最後に日本語センター前事務局長の丹羽義和さんが「この種の定例会は普通長く続かないのに、今回が第204回目だから34年目。その熱意だけでも敬意を表する価値がある」と賞賛した。

 

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 「聖南西地区日本語学校運営改革を進める会」を取材して、色々なことを考えさせられた。いま日本語学校に通っている10代の若者が40年後、50代の時に行われる移民150周年できっと力を合わせてくれるだろうと期待できる。でも、それが減少している。聖南西で新たな取り組みのモデルを作り、それが成功したら、全伯でも繰り返されるという循環が生まれれば最高だ。そのために聖南西の皆さんには、今年しっかり考えてもらいたいところ。

     ◎

 聖南西の会議で出たように、文協の敷居を低くして非日系人をたくさん入れるという考え方がある。それに対し「あまりたくさんいれると、非日系に乗っ取られる」との危惧を持つ人もいる。とはいえ、日系人会員が減少して団体が解散してしまうより、非日系が中心になってでも日本文化親派を増やし続ける団体として残ってもらった方が良いとの考え方もある。一番避けたいのは、非日系が中心になって団体は残ったが、日本文化とは何の関係もない団体になってしまうことか。難しい問題だ。