『サンタクルス病院の歴史』=邦訳版の出版式典を開催=刊行の貢献者を表彰

左から、二宮氏、中前総領事、柳下さん、若松さん、石川理事長、神代さん、永井専務理事、金兼さん

左から、二宮氏、中前総領事、柳下さん、若松さん、石川理事長、神代さん、永井専務理事、金兼さん

 「旧日本病院の歴史を日本語で」――サンタクルス日伯慈善協会(石川ヘナト理事長)は4月25日夜、『サンタクルス病院の歴史』の出版記念式典を、サンパウロ市リベルダーデ区文協ビル9階で開催した。本書は16年4月に刊行された『Historia do Hospital Santa Cruz』の日本語版。旧日本病院の歴史をまとめた日本語出版物は今までなかったという。

 日本病院の落成式は1939年4月29日、天長節(昭和天皇の誕生日)を期して行なわれた。そこから77周年の昨年4月にポ語版が出版され、78周年で日本語版が刊行された。
 出版記念式典には、同協会評議会議長で製作に携わった二宮正人さん、呉屋春美文協会長、中前隆博在聖総領事などが集まり、出版を祝した。
 冒頭の挨拶で石川理事長は関係者への謝意を述べ、「日本の皆様やポルトガル語が理解できない人にも、病院の歴史を読んでもらえるようになり大変光栄だ」と話し、「先人たちの足跡を大事にしつつ、これからも未来に向かっていく」と、将来への想いを語った。
 二宮氏は挨拶で、「当初は3年かかると思ったが、皆の協力があって1年で完成に至った」と明かし、秋篠宮殿下が15年に来伯したときのエピソードとして、「殿下が結核についての歴史を早く読みたいとおっしゃった。だからその章を真っ先に形にした」と翻訳の裏話を語った。
 続いて、呉屋春美文協会長、中前隆博在聖総領事からも祝辞が送られた。ブラジル人尺八奏者のシェン・リベイロ氏による記念演奏ではブラジル音楽がアレンジ演奏され、来場者からは大きな拍手が起こった。
 慶應義塾大学文学部非常勤講師の柳下宙子さん、国外就労者情報援護センターの永井康之専務理事、広島大学からサンパウロ州立総合大学へ留学中の神代貢志さん、金兼文典さんの4人に加え、サンタクルス病院の記念碑へ刻字「絆」を提供した若松孝司さんの計5人へ、感謝状が石川理事長から授与された。
 柳下さんは校閲を担当し、永井氏は二宮氏との共同で翻訳を行なった。神代さんは人名などの固有名詞の確認作業を担い、金兼さんはポ語版からの起訳を作成した。
 同病院は、初期移民が熱帯病でバタバタと斃れる中、当時の内山岩太郎在聖総領事ら功労者の尽力と、昭和天皇の御下賜金が呼び水となり、日本政府機関等の支援を受けて設立された初の日系医療機関だ。
 本書は、1926年の同病院創設の中心になった「同仁会」の設立から、2015年秋篠宮殿下同妃殿下の訪問までを記録した資料的価値の高い一冊となっている。文協ビル内の移民史料館で購入でき、価格は90レ。