ベネズエラ=「医療品全く手に入らない」=在留邦人にメールで取材=深刻な治安悪化と品不足

 「近くにいた人が強盗に拳銃を頭に突きつけられた」「全ての公共機関で長蛇の列」「医療品は全く手に入らない。石鹸や歯磨き粉などの生活必需品すら手に入りにくい」――政治・経済情勢が急速に悪化しているベネズエラ。そこに在住する日本人にメールで取材すると、不安定な政局と最悪の経済状態に悩む日常生活を赤裸々に訴えてきた。同じ南米に住む日本人としては人事ではない状況だ。日本国外務省の発表によれば2015年10月1日時点で、在留邦人の総数は392人で、うち永住者は270人だ。

 現在ベネズエラでは言論統制が強化されており、政治経済に関する情報を個人が発信するのは危険が伴う。取材対象者のBobcatさん(ツイッターのユーザー名)は、首都カラカス以外の場所に住んでおり、本名ではなく、ツイッターのユーザー名を使うことを条件に取材に応じた。
 日常生活で最も困っていることは「治安悪化と品不足」という。
 特に治安については「強盗や強盗殺人、身代金誘拐、マフィア同士の殺し合いなどの犯罪が多い。犯罪被害に直接遭ったことはないが、近くにいた人が強盗に拳銃を頭に突きつけられているのを目撃した」と書く。
 ブラジルでカラカスの様子が報道される際、商品がなくなったスーパーの棚や、市民が商品を強奪する映像がよく映される。そんな生活必需品の品不足に関して聞いてみると、「1年ほど前に比べれば、食料品や日用品はかなり増えた。だが、未だに医療品は全く手に入らない。日用品も石鹸や歯磨き粉など生活必需品は未だに手に入りにくい」と答えた。
 そのため、必要なものを探すのに「スーパーや商店を10店舗も回ることもある」という。中には食料品を高値で転売する人もいるが、「通常の賃金では生活ができないので、何とか副収入を得ようとしている」事情があると話す。
 電気や水道などについては「貧しい地域では頻繁に停電、断水が起こっている」とし、「市役所やパスポートを発行する場所は正常に機能していない。基本的に全ての公共機関でいつも長蛇の列」とのこと。世界有数の産油国だが、地方部では供給が追ついておらず、ガソリンスタンドに長時間並ぶ必要がある。
 4月以降、特に反政府運動が盛り上がっており、すでに39人以上の死者、750人のケガ人が出た。Bobcatさんの居住地域でもデモが起きており「自分も参加した」という。
 「今年3月のデモ参加者は50人ほどだったが、続く4月のデモでは何百人に増えた」という。国民間の反政府意識の広がりを思わせる。ただし地域に日本人が少なく、「他にデモに参加している日本人は見たことがない」という。