春の叙勲=在サンパウロ管轄の5人に伝達祝賀式=日本ブラジル関係促進の功績称える=「見栄張らず一日を大切に」

塚田さん、吉安さん、山添さん、中前総領事、辰巳さん、黒木さん

塚田さん、吉安さん、山添さん、中前総領事、辰巳さん、黒木さん

 日本政府による「平成29年度春の叙勲伝達・祝賀式」が14日、在サンパウロ総領事公邸で行なわれた。管轄在住の5人が対象となり、邦人叙勲では黒木政助さんに旭日双光賞、外国人叙勲では辰巳ジョーさんに旭日小綬章、山添源二さんに旭日双光賞、吉安園子さんと塚田光夫さんに旭日単光賞が授与され、家族ら60人と受勲を祝った。

 両国歌斉唱の後、中前隆博在サンパウロ総領事により勲記と勲章の授与が行なわれた。総領事は各氏の功績を紹介し、「日本ブラジル間の友好・協力関係の拡大に大きく貢献した皆様に改めて敬意を表します。支えたご家族、ご友人にも感謝します」と述べた。
 黒木さん(81、宮崎県)は1955年にコチア青年第1次第1回で移住。コチア青年連絡協議会会長、アチバイア日本ブラジル文化体育協会などを歴任した。挨拶で「ここまでやってこられたのは、色々な方にお世話になったおかげ」と関係者に謝意を述べた。親族8人が祝いに駆けつけ、妻の小夜子さんは「主人は一生懸命働いてきたから選ばれたのだと思う」と目を潤ませ労をねぎらった。
 元サンパウロ州高等裁判所判事の辰巳さん(79、二世)は、日本ブラジル文化連盟会長も務め、日本語学習環境の改善に貢献した。娘のルシアナさんは「父は日本ブラジル両国のために働き、毎日とても忙しくしていた。でもその努力が今回の叙勲につながったのだと思う」と笑顔で話した。
 元サンパウロ州環境局森林院総裁の山添さん(81、同)は、25年間に渡りJICAの林業研究・森林保全プロジェクトに関わってきた。「日ごろから母親が話していた『普段が大事』という言葉を守ってきた。見栄を張らずに一日一日を大切に過ごし、それが積もり積もって今回の結果になった。長年に渡り日本と協力しながら活動できたことに感謝したい」と話した。
 社会福祉法人救済会の元会長、吉安さん(88、同)は「ブラジルも高齢化が進みつつある。好むと好まざるとにかかわらず長生きする。だからこそ、皆さんが実りのある老年期を迎えられる道を求め続けたい」と憩の園に生涯を捧げた真情をのべた。
 元カンピーナス日本ブラジル文化協会会長の塚田さん(86、同)は、多目的体育館建設や岐阜市との姉妹都市交流の促進に寄与。「6年間会長を務めただけ」と謙遜しつつ「引退した身だが、これからも日系団体が発展するよう尽力したい」とはきはき語った。

 

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 受勲した山添源二さんは、79年から04年までの長い間、JICA協力プロジェクトに携わった。「JICAがブラジルで活動を始めた当初、日本が専門家を派遣したり、機材を提供したりするのを、ブラジル政府は日本が何か企んでいると疑っていた」と苦笑いする。地道な活動が功を奏し信頼を得た。「30年前に提供した機材が今でも使われている例も。この国のために役立っている」と目を細める。最も苦労した点を尋ねると、「ブラジルの政権が交代するたびに方針や職員が変わるので、活動の意義を理解してもらうのが大変だった」と話す。特に軍事政権から民政に移行した時期は「活動の継続も危ぶまれた」とのこと。日本ブラジルの間で緩衝材のような役割を果たした人物であることを、改めて痛感させられた。