在外公館長表彰を女性8人に=日系女性活躍のお手本=「日本人の精神伝える重責感じる」

中前総領事を囲んだ受賞者

中前総領事を囲んだ受賞者

 在聖総領事館(中前隆博総領事)は「平成29年度在外公館表彰伝達式」を、在聖総領事公邸で20日に行った。今回は、日伯関係及び日系社会で活躍する8人の受賞者全員が女性という華やかな式典となった。

 中前総領事は式典で「活躍する女性を代表して賞を受けて頂いた」と語り、サンパウロ市に女性の銅像が八つあることに触れ、受賞者数を説明した。関口ひとみ首席領事も「皆さんは黄金の女性です」と称賛すると会場からは温かい拍手が送られた。
 安倍首相の「女性が輝く社会」という旗印のもと、活躍する女性が増えつつあることに同総領事は触れ、「日系社会の女性活躍のお手本」と称賛した。和やかな雰囲気のなか各受賞者が挨拶し、喜びを語った。
 サンパウロ市立劇場合唱団で首席指揮者を務める宗像直実さん(62、広島県)は「大変名誉なこと。音楽は国境を越え、人々の心を一にするもの。合唱団は80年の歴史を持つが今はガタガタ。立て直して行きたい」と顔を綻ばせた。15年までの約20年間、サンパウロ州立交響楽団の合唱団指揮者として名声を築いた。その手腕が買われ、市合唱団の首席指揮者に任命された。
 ブラジル日本移民史料館の運営委員会副委員長を10年務めてきた山下リジアさん(67、二世)は、「先人への表彰を代わりに頂いているよう」と語り、「日本人の精神を伝えてゆくことの重責を感じる」と受賞を謙虚に受け止めた。
 乗船者名簿のデジタル化プロジェクトから関わり、同館を訪問する皇族方や政府要人らを案内してきた山下さん。秋篠宮同妃両殿下が同館を視察された際は、「事前に歩数や説明時間も計算し、過不足なく時間ぴったりに説明できるよう準備をした」と懐かしむ。
 「〃生きた史料館〃にするには、研究所が必要との議論が設立当初からあった。来年は落成40周年。研究所設立に向けて尽力していきたい」と抱負を語った。
 その後の懇親会では、家族や関係者に囲まれて受賞者は喜びに浸り、終始和やかな雰囲気で式典は幕を閉じた。
 受賞者は以下の通り(以下、敬称略)▼山下リジア玲子(ブラジル日本移民史料館運営委員会副委員長▼島田梅エリザベッチ(紅茶「おばあ茶ん」生産者)▼中川郷子(カエルプロジェクト代表)▼中平眞理子(歌手)▼原マリコ・ルシアネ(カンポス桜ホーム長)▼山本五月子(憩の園事務局長)▼藤村ゆり(サンタクルス病院ジャパンデスクマネージャー)▼宗像直実(サンパウロ市立劇場合唱団首席指揮者)

 

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 在外公館表彰を受けた宗像直実さんの父は、第2次大戦で海軍潜水艦の艦長だったという。戦後の57年に牧師としてオランダ船「チサダネ」で渡伯した。なんとその時、船内で合唱団を結成した。そんな父の薫陶を受けて指揮者を志すようになったとか。ブラジル社会の第一線で地位を築いてきた裏には、ひそかに受け継がれた「海軍魂」があったかも。
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 デカセギ帰伯子弟を支援するカエルプロジェクト代表の中川郷子さんによれば、最近になって厚生労働省が在伯子弟の発達障害の調査に乗り出すなど前進が見られたという。だが、「帰伯子弟の教育水準にはさほど変化はない」とし、四世ビザについても「拡大する前に、受入体制の見直しを」と釘を刺す。これまで同プロジェクトを支援してきた三井物産基金からの資金援助が年度末で打ち切りになる見込みで、活動継続が困難な状況にあるという。「子供達はどうなってしまうの。活動を何とか続けていきたいのに…」と肩を落とした。先月、提出された中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書では、デカセギ子弟への支援も明記された。今後の政府の施策に期待したいところ。