サッカーW杯南米予選=ブラジルと他の国はどこで差が付いた?=前回大会からの若手選手の台頭の違い

 サッカーのW杯南米予選は9月の時点で16節まで終了し、残りは10月に行われる2節のみとなった。現時点でW杯進出決定は首位のブラジルのみで、2位以下は大混戦となっている。だが、少し前まで、ブラジルが2位以下に勝ち点差10点以上をつけての独走になると想像した人はどれだけいたのだろうか。
 ブラジルは15年のコパ・ド・アメリカでは準々決勝敗退で、昨年のコパ・ド・アメリカ100周年大会では、決勝トーナメントにさえ行けずに敗退した。W杯南米予選も、昨年8月の段階ではまだ、「予選を突破できるか」という次元の話だった。
 だが、昨年9月から指揮をとりはじめたチッチ監督の下で9連勝し、一気に首位独走となった。
 これを単純に「チッチ・マジックの賜物」とするのは簡単だ。だが、単純にそれだけの問題だろうか。
 采配も大事だが、選手の層がどれだけ厚いか、これこそがやはり問題ではないだろうか。その点で見ると、14年のW杯以後のブラジルの新戦力台頭は光るものがある。センター・フォワードに97年生まれのガブリエル・ジェズス、ミッドフィールダー、ボランチでは、共に92年生まれのフィリペ・コウチーニョとカゼミーロの成長と定着もあった。さらには彼らと同じ年の生まれのネイマールも、今やメッシとクリスチアーノ・ロナウドの2人の次を狙う大選手の位置まで追い上げてきている。
 そうした成長が、ある時期はブラジルよりも期待されていたチリやコロンビア、そしてまさかの大苦戦となっているアルゼンチンに果たしてあったか、となるとはなはだ疑問だ。
 14年W杯が終わった時点では、コロンビアのハメス・ロドリゲスにクアドラード、キーパーのオスピナ、チリでもヴィダルにサンチェスといった選手が、欧州での活躍を高く期待されていた。
 だが、コロンビアの場合、ハメスやクアドラードは期待されたほど伸びなかった。14年の際に負傷欠場した本来のエース、ファルカォの復活もあり、現時点ではなんとか3位をキープしているが、彼ら以外は特に、目だって成長した選手も見られない。
 チリを見ても、ヴィダル、サンチェスは共に世界の一流プレイヤーになっているが、彼らと他の選手との間の溝を埋めることができずにいる。とりわけ、守備陣に人材が不足しており、下位チームに思わぬ大量失点で敗れるなどのもろさも見せている。それが、誰も予想だにしなかった、降格圏内6位の大苦戦につながっている。
 アルゼンチンは、前大会準優勝の立役者となった、別名「メッシ世代」とも呼ばれる87、88年生まれの選手がまだ主体だが、彼ら中心で行くのか、既に「次世代のエース候補」として頭角を現している、共に93年生まれのディバラ、イカルディを交えた、さらなる強力攻撃陣で臨むのかの判断が遅れてしまった。15節からはようやく、「メッシ、ディバラ、イカルディ」の新フォワード・トリオが先発に揃ったが、まだ効果が現れず、現時点で5位と苦戦は続く。
 その一方で、前大会では予選で早々と姿を消していたペルーが、いずれも90年代生まれのクエヴァ、フローレス、カリーロ、タピアといった選手の台頭により、現時点で4位につける大健闘を見せている。
 16節を終わった時点で、2位ウルグアイから8位エクアドルまでの勝ち点差はわずか7点。残り2試合の対戦相手が、9位のボリビアと最下位のベネズエラとなるウルグアイは、進出がほぼ固いと見られているため、残り2チームの進出決定枠を、コロンビア、ペルー、アルゼンチン、パラグアイ、エクアドルの5チームで争うことになる。状況次第では、アルゼンチンやチリが脱落したり、大陸間プレーオフを争う5位になったりする可能性も残っている。