「バランスとれた労使関係に」=商議所、改正労働法セミナー=雇用コスト下げる近代化

Mattos Filho法律事務所で開催されたセミナーの様子

Mattos Filho法律事務所で開催されたセミナーの様子

 ブラジル日本商工会議所の企業経営・地場企業推進委員会(鈴木ワグネル委員長)が主催する「改正労働法セミナー」が1日午後から行われ、約80人が切実な表情で参加した。7月13日に統合労働法(CLT)の抜本改正が連邦議会で承認され、11月11日から施行されるにあたり、雇用者側からは高い期待が集まっている。それを受けMattos Filho法律事務所、日本側パートナーのアンダーソン・毛利・友常法律事務所の共催で前社のサンパウロ市会議室でセミナーが行われた。

 角田太郎弁護士は、全100項目にわたる改正項目から主な約20項目を選び説明した。「通勤時間を勤務時間に含めないようになるなど、企業側に過剰に負担が求められていた現状を是正して、雇用コストを下げる近代化する」点に加え、「労働法の文面に書かれていない部分まで司法当局が『判例』として運用し、事実上の法律化を図るなどしてきた労働裁判所の司法権限を制限する」方向に改正されており、「よりバランスのとれた労使関係を目指すもの」と評価した。
 有給休暇(フェリアス)に関しては、今まで30日間連続取得が義務だったが、労働者との同意に基づいて分割取得が可能に。「3回に分割可能、その内1回は14日以上の連続取得が必要であり、残り2回についても各回連続最低5日の取得が必要」となった。
 現物支給の食事手当や旅費・交通費、現金で支給される報奨金や調整金などは「給与の一部」と見なされなくなり、社会保障費などを計算する時の雇用者負担が軽減される。
 解雇に関して「労働組合の承認を必要としない雇用契約の終了」という新選択肢が加えられた件では、「集団または複数の労働者の解雇をする場合、今まで必要だった労働組合の事前承認、労使協定は不要になった」などの変更が説明された。
 労働者本人に過失がないのに、企業側の事情で解雇する場合(sem justa Causa)、従来と改正後を比較するとこうなる。
 従来は「労働者を解雇する場合、組合の承認が必要」「労働者は貯まっているFGTSの総額の40%に当たる金額を罰金として企業から支払ってもらい、その上、FGTSを全額引き下ろせる」「自ら辞職を申し出た場合はFGTSを引き出す権利は持たない」「企業が解雇を申し渡すときは最低30日間の猶予を与える」「労働者は失業保険をもらえる」という条件だった。
 改正後は「解雇は組合の承認なく、労働者と企業間の合意だけで可能」「企業が労働者に払う罰金はFGTS総額の20%」「労働者はFGTSの80%しか引き出せない」「企業が解雇を申し渡す場合、最低15日間の猶予期間を与える」「労働者は失業保険を受け取らない」という風になる。
 今後、組合や労働者側から根強い反発と揺り返しも予想されそうだ(本日1面にも関連コラム「樹海」)。