《ブラジル》「本物の教師育成目指す」=南伯日本語教師協会の新会長=日本語しゃべらず、非日系

日本祭りに出店していた同協会(左がカンポス会長)

日本祭りに出店していた同協会(左がカンポス会長)

 「本物の日本語教師を育てなければ」と力強く語ったのは、非日系人のジュッサーラ・リマ・デ・カンポスさん(59)。日本語をしゃべらず、日本語教師でもないが、今年から南伯日本語教師協会の会長に就任した。本職はセラピストで、日本人マッサージ師に教えを受けて感動した経験から、日本文化に関心を持つようになった。8月のリオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレ市の日本祭りで、運営資金集めのため日本関連書籍の販売をしていた。同教師会は資格を持たずに日本語を教える日語教師のレベルアップ、彼らの意欲向上を図っている。祭りも終盤となり落ち着きを見せる中、カンポス会長に就任した経緯を聞いた。

 カンポス会長は2004年、カシアス・ド・スル市のショッピング・モールで二天古武道研究所の岸川ジョージ所長の著作出版イベントを企画し成功させた。「多くの人が来て依頼者も大喜び。これが日系社会と関わるきっかけになった」と振り返った。
 翌年カンポス会長はカシアス・ド・スル日伯文化協会(高梨輝久会長、77、神奈川県)から日本文化イベントの企画を依頼され、見事成功させた。それを見た高梨会長は、当時同市日語学校の校長も務めていたが多忙だったため、ジュッサーラさんに同校の経営も依頼した。
 高梨さんから「語学や日本文化は商売ではない。だからこそ、責任を持ってやってほしい」と語りかけられ、カンポス会長はすぐに承諾した。「適当なことが嫌いな性分。彼の言葉が気に入った」と理由を語った。
 高梨さんは「当地の日語教育機関はその内、ほとんどがブラジル人経営になるだろう。日語の生徒が将来、日語教師を目指せるような教育をしなければ。カンポスさんの息子を通じて交流があったため彼女に頼んだ」と依頼した理由を語った。
 日系人の少ない地域にある同校だが、月に一度日本文化のイベントを行うほか、伯日交流協会やJICAの日語教師の覇権も受けている。生徒の意欲向上のため、能力試験の受験を学校の方針として掲げている。
 カンポス会長が同教師協会会長に就任する前、会はほぼ活動していなかったそう。南日伯援護協会を通じ、日本から教師協会の講習会費の援助を受け取っていたが、その収支報告が滞るまでになっていた。
 昨年、そんな教師会の現状が援護協会で疑問視され、活動を立て直すか組織解散するかを迫られた。その時、経営手腕が認められていたカンポスさんに白羽の矢が当たった。彼女に今年と来年の2年間会長を務めてもらい、存続するかどうかの「見極め」期間とすることになった。
 大役を背負ったカンポス会長。「教育は文化。日本は昔から続く豊かな教育のおかげで発展した。ブラジルの成長のためにも、しっかりとした教育が必要」と述べた。

 

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 南伯日本語教師会では夏季、冬季講習を開催している。来年の夏期講習では、初心者の日本語教師向けの内容を企画。カンポス会長は「机にはりついて勉強する『修行』のような集中講義もしたい」と語った。同教師会では「日語教師としての免状」のようなものを出すことを目指している。教師の日語教育にたいするモチベーションを上げるための正当な評価の必要性を感じたためだといか。彼女によると、デカセギ子弟の帰国者が教え始めるなど、日語教師は増加の傾向にあるそう。でも日語能力試験すら受けていない日語教師も多いとか。彼女の日本語教師会の「建て直し劇」に注目か。