《ブラジル》CIATEコラボ会議=「日系人就労者の軌跡と未来」=(上)=訪日就労者子弟の教育環境

厚労省から感謝状を受取る二宮理事長

厚労省から感謝状を受取る二宮理事長

 国外就労者情報援護センター(CIATE、二宮正人理事長)が7、8日の両日、文協ビル小講堂で『2017年度CIATEコラボラドーレス会議』を開催した。CIATE設立25周年を迎えた今回のテーマは「CIATE設立25周年―日系人就労の軌跡と未来」。現在の在日日系人の雇用状況や教育問題などについて日本政府関係者、専門家が発表した。また、7日には開会式及び設立25周年記念式典も行われた。

 式典には、日本から訪問した小林洋司厚生労働省審議官、海外日系人協会の田中克之理事長のほか、ブラジル側からエルメネジウド・ペレス・アルヴェス社会保険省国際協力対策社会保険事務所上級管理官、外務省領事館及び在外ブラジル人担当局長のマリア・ルイーザ・リベイロ・ロペス・ダ・シウバ公使、関口ひとみ在サンパウロ首席領事らが来賓として出席し、祝辞を述べた。
 挨拶に立った二宮理事長は、25周年を迎えたことに関しCIATE関係者らに感謝の意を示し、「これからの2国間関係のため、ブラジルの日系人、訪日就労者、ブラジル進出日系企業が3本柱として重要性を増してくる」との見解を語った。
 会議開会と25周年に祝辞を述べた田中理事長は「在日ブラジル人子弟の教育問題」について講演。「在日ブラジル人子弟の問題の一番は教育問題」と見解を述べた。
 法務省在留外国人統計によると、16年時点で在日ブラジル人数は16万人。さらに、文部科学省の調査によれば、日本の公立教育機関の在籍外国人生徒数は約8万2千人(16年)。そのうち、ブラジル人の小学生は1万2597人、中学生は6259人、高校生は6859人に上る。
 田中理事長は「この外国人生徒のうち、48%に日語指導が必要とされている」と明かし、日語能力の問題で通常の授業についていけない生徒を対象とした取組みと課題を紹介した。
 通常授業とは別に、日語能力の低い生徒を個別に教えるなど特別教育課程を行う場合、『日語指導用』の教員が必要となる。「『加配教員』と呼んでいるが、地方の学校にはその人材が不足している」と語った。
 また、豊橋市など外国人集住地域の小学校で行われている加配教員を入れた授業の様子を紹介。田中理事長によると、特別教育課程を実施している学校からは「外国人生徒の日語能力が上がるなど効果が出ている」と評価が聞かれるそうだ。
 豊橋市の調査では、市内の外国人生徒の進学率が08年時点の73・3%から14年には89・9%に上昇。高校進学を希望した中学生119人の内107人が進学に成功した。
 田中理事長は「どんな地方でもまず外国人を受け入れる体制作りが大事」と話し、「文部科学省としては加配教員などの人材や資金を地方に配分したいとの意向がある」と説明した。
 講演後は、設立以来CIATEに務めている真田エレーナ職員ほかCIATE関係者らに感謝状や記念プレートを贈呈。最後は、CIATE日語教員らの歌やダンスの発表が行われた。
(つづく、國分雪月記者)

 

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 講演を行った海外日系人協会の田中理事長の発表によると、外国人子弟の担当教員が抱える悩みの一つが、「日語ができない父兄とのコミュニケーション」だそうだ。「ランドセルや紅白帽、給食や掃除の時間など日本の教育環境についての説明が必要。教員側からは保護者側も日本文化の勉強をする必要がある、という意見が出ている」とか。