《ブラジル》中絶完全禁止法案に抗議運動=経済的理由での容認請願書も=最高裁の女性判事ウェベル氏が裁定

PEC181に抗議する人々(Rovena Rosa/Agência Brasil)

PEC181に抗議する人々(Rovena Rosa/Agência Brasil)

 現在、下院特別委員会が審議中の、受精段階での生存権を認め、一切の中絶を禁止することを求めた憲法改正案(PEC181)に対し、リオ市やサンパウロ市などでは、同案に反対する市民による抗議行動が起きている。
 そんな中、社会自由党(PSOL)とAnis―生命倫理研究所(Anis)が22日、妊娠6週間の学生、レベッカ・メンデスさん(30)の中絶容認の請願書を最高裁に提出したと、21~23日付現地紙・サイトが報じた。
 ブラジルでは中絶は法律で禁じられており、強姦による妊娠、出産が母体を危険にさらす場合、胎児が無脳症の場合は、例外的に中絶が認められる。ただし、最高裁は昨年、妊娠3カ月までの中絶は犯罪とみなさないとの見解も出している。
 メンデスさんは既に2人の子供を抱え、経済的にも精神的にも出産できる状態にないと訴えているが、最高裁がメンデスさんのようなケースで中絶を認めた例はない。
 レベッカさんは、非合法中絶自体は難しくないとした上で、「私は非合法の中絶により、出血多量で死んだり、家から追い出されたり、罰せられたりしたくない」とし、正規の許可を得ようとした理由を述べた。
 ブラジルでは非合法中絶を試み、不適切な処置や炎症発症などで亡くなる女性が1日平均4人いるという。妊娠中絶は15年だけで50万3千件起きたという調査もある。
 PSOLとAnisが提出した請願書は、3月に提出した「社会規範違反に関する意見書(ADPF)」の焼き直しだ。弁護士のシナラ・グミエリ氏は、「レベッカさんのように悩む人が、またもや現れた。3月以降、少なくとも33万人が非合法中絶を行っている」と語った。ADPFは、中絶を犯罪とみなすブラジルの刑法は、憲法が保障する人権(名誉権、自主権、市民権)を侵害しているとの立場をとっている。
 請願書はSTF第1小法廷所属のローザ・ウェベル判事扱いとなるが、同判事が判断を下すための期日は決められていない。グミエリ弁護士は、「請願書が受け入れられれば、望まない妊娠の状態にある全ての女性に光明となる」と語った。最高裁が今回の請願を受け入れれば、判例となり、妊娠12週間以内の女性の中絶が全て認められる可能性もある。
 Anisは3月のADPF提出後、8年以上前に中絶を行った女性たちへの聞き取り調査を行った。「結果は衝撃的で、多くの女性が、『これまで、誰にも話せないでいた』と語った。自分の命を危険にさらし、その後いかに孤独だったか」とAnisは発表した。