《ブラジル》国家水資源庁、「水資源動向調査」を発表=13~16年は水被害が深刻化=「ずっと対策を怠ってきたツケ」と専門家

首都ブラジリアでも渇水は深刻だ(参考画像・Pedro Ventura/Agência Brasília)

首都ブラジリアでも渇水は深刻だ(参考画像・Pedro Ventura/Agência Brasília)

 雨不足、干ばつ、大雨による激流や洪水…。ブラジルではこうした災害はつきものだが、過去数年でその規模はより大きくなっていると、1日付現地紙が報じた。
 国家水資源庁(ANA)が4年おきにまとめしているレポート、「ブラジル水資源動向」によると、2013年から16年までの4年間で、水害や渇水の被害を受けた人の数は、人口の4分の1以上にあたる5570万人で、被害総額は年間90億レアルにも及ぶと試算されている。
 被害に遭った5570万人の内、4800万人は干ばつ、水不足の被害を受けており、残る770万人は洪水、大水、浸水などの被害を受けた。 北東部の9州は12年の終わりから干ばつに悩まされ続けており、13年から16年にかけて、少なくとも1回は水不足による緊急事態宣言、または非常事態宣言を発令した市は、全1794市の内78%に上る。
 16年は観測史上、干ばつの被害がもっとも大きかった年とされているが、ANA幹部のジョアキン・ゴンジン氏は、今年も昨年の被害を上回りそうだとしている。
 セアラー州の場合、以前は、水不足は農村地帯や限られた狭い地域でだけ発生していたが、最近では都市部にも被害が広がっている。
 州都フォルタレーザから200キロはなれたキシェラモビン市では、水道の水が5日に1日しか出ない地区があり、商店主らは給水車と契約して店の掃除などを行っているが、この経費は商品価格に上乗せされるため、商売はあがったりだ。
 12年は北東部の540の自治体に、延べ3千回、給水車が出た。16年は、給水車の出た回数が2倍以上の6788回に増えた。
 渇水とは逆に、サンパウロ州内陸部サウト市のように、洪水が日常茶飯事と化してしまった地域もある。
 同市でバールを営むルイス・ガンザーノ氏は、「川から水や泥、泡が溢れると、道路が何日も覆われてしまう」と嘆く。ガンザーノ氏は年20~30日の休業を余儀なくされているし、洪水が酷くなると小型のボートを使ってしか家から出られない住民も多いという。
 ANAの専門家によると、降雨の傾向が劇的に変化したのは、ブラジル国内で気候変動が起きていることの表れだという。
 だが、北東部を流れる主要河川、サンフランシスコ川の河川流域委員会委員長アニヴァウド・ミランダ氏は、「気候変動の問題もあるが、それ以前に、我々は過去数十年にわたる貧弱な治水政策や、無計画な環境開発のツケを払わされているにすぎない」としている。
 リオ州連邦大学経済研究所のカルロス・ヤング教授も、自然災害で多大な損失を被りたくないなら、予防対策に資金を割くよう提言している。