《ブラジル》刑務所問題=超過収容の傾向止まらず=全国平均収容率ほぼ200%=4割は判決待ちの勾留者

アマゾナス州アニシオ・ジョビン複合刑務所(参考画像・Marcelo Camargo/Agência Brasil)

アマゾナス州アニシオ・ジョビン複合刑務所(参考画像・Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 ブラジル法務省が8日に発表した刑務所実態調査(Infopen)によると、国内の刑務所の囚人数は2016年6月現在で72万6700人に達し、200万人の米国、160万人の中国に次ぎ、世界第3位だった事が分かったと、9日付現地各紙が報じている。
 15年末から16年6月末の間に、刑務所の定員総数は3152人減ったが、囚人は2万8094人増えており、収容率は188%から197%に上昇した。各刑務所は平均で、収容人員の倍の囚人を収監している。
 法務省は昨年11月に収容率の上限を137・5%とする勧告を出したが、それに従っている州は一つもない。最も収容率の低いエスピリト・サント州でも145%だ。
 NGO団体、自己防衛権保護研究所(IDDD)のファビオ・トフィック会長は、「囚人の数は増えるばかりで、暴力、治安問題は悪化の一途だ。ブラジルの刑務所制度は、犯罪を増やす要因であることを示唆している」と語った。
 ブラジルでは、人口10万あたりの囚人数も増加している。2014年の囚人数は10万人あたり299・7人だったが、15年12月には342人に増えた。15年12月現在の囚人数世界トップ20カ国の中で見た10万人あたりの囚人数は、米国(666人)、ロシア(448人)、タイ(445人)に次いで、4位だった。米国やロシアは囚人数が減少傾向にあるのに、ブラジルは増加傾向が続いている。
 逃走や証拠隠滅、捜査妨害の恐れありとして予備的に勾留された人物や現行犯逮捕された被疑者の内、実際に刑が確定していない勾留者は、囚人全体の40%を数える。この事実は、囚人数を減らすための試みがほとんど実を結んでいないことを示している。
 現行犯逮捕された被疑者を裁判官が尋問し、判決が出るまで自由の身で過ごしてよいかどうかを判断する保護尋問もその一つだ。国家刑務所管理部(Depen)ジェネラル・ディレクターのジェフェルソン・デ・アルメイダ氏は、保護尋問の効果について訊かれ、「保護尋問は採用されてまだ時間が経っていないし、全ての連邦司法区で採用されている訳でもない」として明言を避けた後、「Depenは保護尋問や電子足輪使用、服役に変わる社会奉仕などの代替案採用などを促進し、囚人数がむやみに増えないよう骨を折っている」と弁明した。
 薬物関連犯罪による囚人の割合は、15年の26%から16年は28%に増えた。女性囚人の62%は薬物密売関連で、男性の26%より比率が高い。
 囚人の社会的背景を見ると、黒人または褐色人種が65%、18~29歳の若者が55%、初等教育しか受けていない人(小中学校卒や同中退)が75%を占めている。