日舞「ブラジルの水彩画」で魅了=新年の藤間流舞踊大会=ブラジル人に伝統文化を

会場を魅了した「鷺娘」のクライマックスの一場面

会場を魅了した「鷺娘」のクライマックスの一場面

 藤間流舞踊学校(江口桂校長)が13、14日の両日、サンパウロ市の文協ビルで『第2回藤間流舞踊大会』を開催した。110周年公認行事の関係で、同ロゴにならって公演の開幕演目を「鶴」にし、「さくらさくら」「アクアレラ・ド・ブラジル」という日本・ブラジルを意識した演目で閉幕するなどのアイデアが散りばめられた。歌舞伎の歴史や舞踊技法の写真展が設置されたほか、14日にはメイクと着付けのワークショップ、舞踊公演が行われた。来場者は両日で約1500人。うち3割近くを非日系が占め、公演では大講堂が満席になった。

ワークショップでは「雛鶴三番叟」の衣装に

ワークショップでは「雛鶴三番叟」の衣装に

 公演前のワークショップでは、ロビーの特設舞台で化粧と着付けをポ語の説明付きで実演。興味深げに立ち見する人、化粧の様子を撮影する人などで賑わった。約1時間半も熱心に立ち見していたアリーニ・トルシアさん(32)は、「日本文化関係の催しにはよく参加するが、化粧や着付けを見たのは初めて。伝統衣装を近くで見られて良かった」と語った。
 UNESP(サンパウロ州立大学)演劇科のジオバナ・サンチアゴさん(23)は「自分が学ぶ演劇とは全く別のもので興味深い。日本の本当の文化を見られた」との感想を語った。
 午後から始まった舞踊公演は長唄の「雛鶴三番叟」で幕開け。和の会グループなどの演奏に合わせ、4人の演者が厳かな舞で開演を祝った。
 「連獅子」では故藤間芳之丞さんらが演じたビデオを上映。上映が終わると父獅子に扮したレナン・フェルナンデスさんと子獅子のマルシオ・ガルヴァンが登場し、長い毛を激しく振り回し会場を楽しませた。
 最後の演目「さくら変奏曲」と「アクアレラ・ド・ブラジル(ブラジルの水彩画)」では、出演者全員が舞台に上がって舞い、大きな拍手が沸き起こる中、閉幕した。
 来場した千田修子さん(87、大阪府)はかつて30年間ほど同学校に所属し舞を習っていた。「やっぱり素晴らしい演技や衣装ばかり。ブラジルで日本の本当の舞踊が見られて涙が出るほど嬉しかった」と興奮冷めやらぬ様子で語った。
 ブラジルの曲に舞踊の振りを付けて披露することは江口校長の夢だった。「ブラジル人に日本舞踊を広めるという母の夢も、しっかりと実現できたのでは」と同校長。さらに「私達の日本文化をブラジル人にも伝えたいと思い、本イベントを開催した。ブラジル人向けに広報したおかげで、文協に来たことがない人もたくさん来てくれて生徒達も大喜び。早速来年のことについても話合っている」と充実感をかみしめていた。

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 藤間流舞踊大会の中心演目ともいえるのが、鷺が人間の娘の姿になり踊る「鷺娘」。藤間芳琴さんが白い着物と黒い帯の姿で登場。雪が降りしきる中、鳥のような所作で舞った。その後白から赤への着物の引き抜きで鷺から町娘へと変身。「娘の恋心」「流行歌」「傘づくし」の舞いを着物を変えながら次々と披露。演者の装いが変わる度に拍手が沸いた。可愛らしい「傘づくし」から一転、娘は再び鷺の姿に戻り、雪が落ち始めた。人間に恋したために落ちた地獄の責め苦に遭いながらも羽ばたこうとする鷺を表現し、鷺が息絶えるクライマックスでは観客から大きな拍手と歓声が送られた。