《ブラジル北部》ロライマ州=ベネズエラ人住居放火事件相次ぐ=「外国人排斥か」動機を調査=移民急増による緊張表面化?=国防相、法相も現地視察

ラウル・ジュングマン国防相(Arquivo/Agência Brasil)

ラウル・ジュングマン国防相(Arquivo/Agência Brasil)

 【既報関連】ベネズエラからの移民が大量に流入している北部ロライマ州の州都ボア・ヴィスタ市で、5日と8日の未明にベネズエラ人が住む住居が放火される事件が起きた。ボア・ヴィスタ市には、人口33万人のところに1割を超す4万人のベネズエラ人が流入しており、緊張も高まっている。8日に現地を視察したラウル・ジュングマン国防相やトルクアルト・ジャルジン法相も、これは政府が対処すべき問題だとして対策に乗り出したと、8、9日付現地各紙・サイトが報じた。

 5日未明に発生した事件では、火炎瓶が投げ込まれて爆発。死者は出ていないが、住居に住んでいた女性が一人、顔から、首筋、背中にかけて大火傷を負った。
 捜査を指揮するクリスチアーノ・カマプン警部(殺人課)は「動機、犯人の行方を捜査中だ。犯人がブラジル人か、ベネズエラ人かも分かっていない」と語った。現時点では、逮捕者は出ていない。
 8日に発生した、ベネズエラ人の大人6人、子供7人が住む家の放火も火炎瓶が使われ、爆発により、3歳児と両親が大火傷した。この件も殺人課が捜査中だ。「政治危機、経済危機が起こる前の生活は、何の不自由もなかった。でも今は、病院も学校も食べ物さえもない。だからブラジルに逃げてきたのに…」と、ジャンケリー・ヴァスケスさん(29)は語る。
 ロライマ州公共保安局長のジュリアーナ・カストロ氏は、「ベネズエラ人がこうした被害に遭うのは初めてではない。事件が外国人排斥思想に基づくものなのかを調べ、それが証明されたら、犯人には重い罰が下る」と語った。
 ボア・ヴィスタ市でのベネズエラ国民急増とそれへの対応は複数の省庁も交えた会合の議題になっており、8日にはジュングマン国防相やジャルジン法相、セルジオ・エシェゴイイェン安全保障局長が同市入りし、地元当局者やベネズエラ人と面会した。
 国防相はこの日、国境警備を強化するため、派遣兵士を200人に倍増することなどを発表。市内の広場で野宿している300人のベネズエラ人の何人かを聴取した後には、「現状にショックを受けた。これは人道的な問題だ。彼らは自ら望んで国を捨ててきたわけではない。そうせざるを得ない状況に追い込まれたのだ。人道支援はロライマ州やボア・ヴィスタ市だけでなく、国全体で考えるべき問題で、移民の受入先も全国に広げるべきだ」とも語った。
 また、法相は、90日以内に全国で1千人のベネズエラ人を雇用するためのパイロットプロジェクトを発表した。詳細はまだ明らかにされていないが、「立派な職歴、職能、学歴のあるベ国人も多いから、各人に相応しい職場を提供できれば」と同法相は語っている。