サンパウロ市=ホームレスが墓場に定着=ノヴァ・カショエイリーニャに50人

 サンパウロ市北部のノヴァ・カショエイリーニャ墓地。同市では2番目に大きい市営墓地で、2万1千人が葬られているが、同墓地には、50人ほどの生きた人達も住みついているという。
 35万平米の墓地は荒れており、迷い込んだ動物の死骸を奪い合うハゲタカや人の背丈ほどある草、動物が腐乱した後の骨などがいたる所で見受けられる。死んだ動物の死骸が腐乱する時の悪臭が漂っている事は言うまでもない。
 だが、この光景は墓地の入り口から500メートルほど歩いたあたりで様変わりする。竹や木切れを支柱にし、ビニールシートで屋根を葺いた小屋が少なくとも5軒たっており、人の話し声なども聞こえてくるのだ。
 ビニールシートで囲った小屋には、ソファや椅子、洗濯物を干すロープなども用意され、埋葬後に朽ちた遺体の骨を掘り出して集めておく二つの分厚い壁の間の空間がトイレになっている。
 約50人の住人には身体障害者や高齢者、女装した男性なども含まれているが、子供の同居は認められていない。墓地という特殊な環境で、麻薬使用者もいるからだ。
 住人の中には、家族と共にミナス州ベロ・オリゾンテから出てきて、サンパウロ市の商業区ブラスで販売員として働こうとしたがうまくいかずに離婚。8歳の子供は母親と共にミナス州に戻ってしまい、「寂しい」と繰り返す男性もいる。
 仕事がなく、同地区に住む母親のもとに身を寄せたが、母親が様々な決まりを作ったために家を出て、路上生活を始めた後、5カ月前から墓地に住んでいるという。
 日系3世の男性は、麻薬に手を染めたが、複数の企業で働き、日本語の通訳として働いた経験も持つ。日本にも出稼ぎに行ったが、麻薬密売や器物損壊その他の罪で捕まり、1997年に強制送還された。家族にも見放され、冠婚葬祭以外は家族に会う事もないという男性は、麻薬中毒で身を持ち崩し、廃品回収で日銭を稼いでいる。稼ぎの大半は麻薬に消え、ゴミの中から見つけた食料などを仲間と分け合って生きているという。
 長い人は15年以上墓地の中に住んでおり、雨の降る日は、墓石を動かし、棺の横に眠ったりするという。
 墓地そのものには塀もなく、隣にあるボイ・マリャードと呼ばれるスラム街が墓地の中に侵出しているという。敷地は広大だが、清掃などを行う職員は6人だから、手が回るはずもない。スラム街に敷地を少しずつ切り取られている墓地に住む人達は、訪ねてきてくれる人さえほとんどないという環境の中、肩を寄せ合いながら生きている。(BBC提供、5日付G1サイトより)