マリエーレ・リオ市議=殺害後、国内外で大きな波紋=全国各地で抗議集会開催=国連や欧州はブラジル政府批判=リオの直接統治は正念場に

15日、マリエーレ氏の棺を運ぶ人たち(Fernando Frazão/Agencia Brasil)

15日、マリエーレ氏の棺を運ぶ人たち(Fernando Frazão/Agencia Brasil)

 14日夜、リオ市中央部で、人権運動の闘士として知られていたリオ市議のマリエーレ・フランコ氏が射殺された事件は、国内のみならず、世界的にも大きな反響を呼んでいる。リオ州の治安は連邦政府の直接統治下にあるため、政府も責任を問われるなど、犯人探しが重要な局面となりそうだ。16日付現地紙が報じている。

 15日、リオ市議会ではマリエーレ氏と、同氏の車を運転中に殺害されたアンデルソン・ゴメス氏の通夜が行われた。そこには何万人もが集まり、社会主義民主党(PSOL)の党員らが運ぶ彼女の棺を固唾を呑んで見守った。
 同日は、サンパウロ市パウリスタ大通りをはじめ、全国の州都クラスの都市の大半で抗議運動が行われ、「マリエーレ・プレゼンテ(ここにいる)」「アンデルソン・プレゼンテ」が合言葉となった。
 また、マリエーレさんの訃報は国外にも届き、大きな波紋を投げかけている。
 国連は、「ブラジル政府が我々からの警告を無視した」との厳しい見解を下した。国連人権委員会は以前から、ブラジルに対し、17人もの活動家が命の危険に晒されていると勧告していたという。国連は今回の事件の捜査には、厳しい態度で当たるよう求めている。
 また、スペインの政党ポデモスや欧州連合(EU)の議員たちは、この件の捜査が終わるまで、EUと南米共同市場(メルコスル)との自由貿易に関する協議を中止するように要請した。
 また、ニューヨーク・タイムス(米国)、ガーディアン(イギリス)、ル・モンド(フランス)などの各紙がこの事件を報じた。スペインの通信社エフェは、マリエーレ氏は連邦政府によるリオ州統治のやり方を批判した翌日に射殺されたと報じた(実際には、10日にアカリと呼ばれるスラム街での軍警第41大隊所属警官の暴力行為を批判、13日は前日起きた青年殺害事件に触れ、ネット上に「(治安を取り戻す)戦いの中であと何人が命を落とせばよいのか」と書き込んだ)。
 連邦政府によるリオの直接統治は16日で丸1カ月となったが、目に見える成果はまだ出ておらず、この一件で正念場を迎えることとなった。
 同件の捜査はリオ市警が行っている。使用された銃弾が警察などの治安関係者が使う9ミリ口径の物であったことや、後ろから車で迫りながら13発を連射し、後部座席右側にいたマリエーレ氏と前方左側の運転席にいたアンデルソン氏を撃っていること、マリエーレ氏を襲撃した車は、同氏が出席したイベント会場からつけていたことなどから、治安関係者による計画犯罪と見ている。
 リオ市では事件前日、直接統治執政官の命で、市警や軍警の本部への監査が始まっていた。リオ大都市圏では同日、警官や消防士なども関与した犯罪組織(ミリシア)摘発で、軍警4人が逮捕される事態も起きていた。