《ブラジル》あふれる路上生活者の心身の痛みに関する調査発表=酒や薬物で紛らす人も=偏見が医療機関から足遠ざける

サンパウロ市セントロ地区のセー広場の路上生活者たち(参考画像・Rovena Rosa/Agência Brasil)

サンパウロ市セントロ地区のセー広場の路上生活者たち(参考画像・Rovena Rosa/Agência Brasil)

 サンパウロ市セントロ(中央部)のアマラウ・グルジェル街の中央分離帯で、上を走る高架道路を屋根代わりに住みついている路上生活者に「痛むところはないか」と聞くと、驚きの表情を見せた。23日付ブラジル現地紙が、日頃顧みられない路上生活者の心身の痛みに関する調査結果を掲載した。
 彼らは口々に、背骨や頭、腹、脚、関節に歯と痛む箇所を訴えたが、最も路上生活が長いネルソンさん(37)は「軽蔑され、侮辱された時の心の痛みが最悪」と語る。彼はクラック中毒だ。
 彼らの言葉は、サンパウロ市のアルベルト・アインシュタイン病院と米国の大学が行った、路上生活者の痛みに関する調査の結果を裏付けた。
 アルベルト・アインシュタイン病院の調査員エリゼチ・レオン氏は、「病院内でさえ、部署によっては痛みを軽んじる風潮がある。路上生活者に対しては推して知るべし」と語る。
 アルベルト・アインシュタイン病院の報告はセー地区の路上生活者69人の情報をまとめたものだ。同調査の対象予定者は同地区の公共医療機関に通う401人だったが、話を聞けた367人中、298人は酒やドラッグ中毒で対象外となった。
 2015年実施の別の調査によれば、サンパウロ市には夜は路上で寝る路上生活者が7335人おり、その半数の3864人はセー地区にいる。夜は収容施設に行く路上生活者は8570人いた。
 調査の結果、95%が体のどこかに強い痛みを感じており、74%は背骨、11%は頭、9%は腹部が痛むと答えた。痛みの32%は継続的なものだという。
 痛みが及ぼす影響は、「眠れない」が87%、「不機嫌になる」が84%、「歩くのが辛い」が82%、「人生を楽しめない」が79%、「全ての活動に支障をきたす」が71%、「人付き合いに支障をきたす」が67%だった。
 医薬品服用者は35%に過ぎず、65%は何もしていなかった。67%は「医師の指示を守るのが難しい」としている。
 路上生活7年のヴァルリーさん(40)は、「痛ければ酒やドラッグをやる。治らないけど、痛みは和らぐ」と犬を撫でながら語った。酒や麻薬で痛みを紛らす人はも、23%いた。
 アルベルト・アインシュタイン医科大学大学院で学ぶ看護婦のアリアネ・カンポスさんは、路上生活者たちの心身の痛みが顧みられない現状を修士論文のテーマに選んだ。
 彼女は、「医療関係者は彼らの痛みに注意を払わない。また、医療施設での長い列や、不潔であるために人々から向けられる偏見の目が、彼らの足を医療施設から遠ざけている」と分析した。
 この研究結果は、4編の無料ビデオ講義にまとめられた。ビデオでは、医療従事者がどのようにして路上生活者の心身の痛みに向き合い、対処すべきかを伝えている。