ジェトロセミナー=中南米は企業活動に優位に=中道政権にドミノ倒しで=大統領選や貿易協定に注目

進出企業関係者ら100人が出席した

進出企業関係者ら100人が出席した

 日本貿易振興機構(ジェトロ)サンパウロ事務所とブラジル日本商工会議所が共催する「中南米ビジネスセミナー」が14日、サンパウロ市内ホテルで開催された。中南米に拠点を置く同機構駐在員が一堂に集う機会を活用し、各国の経済やビジネス概況、産業動向、通商協定などが説明された。今年は中南米主要国で大統領選挙を控え、政治動向に注目が集る。そんな最新動向を把握する貴重な機会となった。

 初めに同機構海外調査部の竹下幸治郎中南米主管が、中南米政治経済の概況を講演。中米は原油価格や米国景気波及を、南米は資源価格に影響を受けやすい経済構造にあるとして、近年の経済低迷の背景を俯瞰した。
 今年の注目点としてブラジル、メキシコ、パラグアイ、コロンビアなど主要国で立続けに行われる大統領選挙を挙げた。15年には保護主義的傾向の強い左派政権が大半だったが、開放経済傾向の強い中道や中道右派政権にドミノ倒しのように変わりつつある。不安定要素はあるが「企業活動に優位な方向に変化しつつある」と分析した。
 ブエノスアイレス事務所の紀井寿雄所長は主に近年の亜国の政治経済情勢について解説。15年マクリ政権発足により、輸入規制や為替規制、輸出税など企業活動に適さなかったビジネス環境が大きく改善され、規制緩和が進展、国際金融界からの信頼が回復したと高評価した。
 一方でインフレ率の高止まりは続き、昨年後半から世論の経済情勢評価が悪化に転じたと指摘。17年議会中間選挙の結果についても「マクリ政権が素直に評価されたと見ることもできるが、野党分裂が進んで与党連合が支持を拡大させた」として政権の信任には疑問符を付けた。今後の安定的政権運営に向けては、各種制度改革の必要性などに言及し、「種蒔きの時期にある」との見方を示した。
 「日亜関係は16年から4年連続で首脳が両国を往来する黄金の4年間にある。過去にないほど関係が深化した」と強調。日本で亜国再評価が進むなか、「輸入販売会社など5~10社の進出が見込まれるが、生産拠点を持つような企業の進出はまだ先」と見通した。
 チリ・サンティアゴ事務所の中山泰弘所長は、同国は銅を中心とした鉱物資源に依存し、資源価格の下落に伴って14年から低成長が続き、17年は1・4%を見込むと説明。
 日智の貿易関係は07年のEPA発行後も貿易額は伸びず、中韓とは対照的。一方で、政治社会情勢や投資環境面でのリスクは低く、3月に就任したピニェラ政権のもと、法人税率引下げや更なる自由貿易協定推進など、ビジネス環境の安定化が見込まれる。
 メキシコ事務所の半澤大介さんは、「米トランプ大統領就任後も、自動車産業への投資は続き、昨年には過去最高の生産台数393万台、輸出台数310万台を記録。鉱業は低迷するも、特に製造業、商業、金融保健は好調で、17年のGDP成長率は2・1%を見込む」とした。
 昨年8月から開始された北米自由協定の再交渉の経緯を解説。特に関心が高い自動車の原産地規則について、その割合引上げが見込まれることに言及し、北米輸出比重の高い企業には大きな影響が出ることを予測した。
 最後に大統領選挙の動向について、支持率首位に立つ中道左派のロペス・オブラドール候補が当選した場合、「現状の構造改革の先行きが不透明となる」と見通した。